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2016年10月31日

Trina Solar社がp型多結晶シリコン太陽電池モジュールで変換効率19.86%、カネカ社はヘテロ接合モジュールで24.37%を達成

Trina Solar社とカネカ社が2016年10月に各々、結晶シリコン型モジュールモジュール変換効率を更新したことを、発表していました[1][2]。

概要は次の通り。


Trina Solar社(2016/10/18発表)

太陽電池の種類p型の多結晶シリコン型(「Honey Plus」モジュール)
セルは156×78mm2120枚使用。
モジュール変換効率19.86%
開口部(1.514m2)での数値。
ドイツの「Fraunhofer ISE CalLab」で認定された。
用いた技術(一部)
  • 独自開発の多結晶シリコンウエハー(少数キャリアの寿命が長い)
  • half-cell interconnection
  • PERC(passivated emitter and rear cell)技術
  • 高効率な光捕捉

カネカ社(2016/10/27発表)

太陽電池の種類ヘテロ接合バックコンタクト型
モジュール変換効率24.37%
産総研で測定した数値。
測定時のマスクの開口部面積は1万3177cm2
用いた技術(一部)
  • ヘテロ接合バックコンタクト型セル(108枚使用)
  • セル間の配線技術(モジュール内の抵抗損失を低減)
  • 光の収集効率を高める技術

Trina社のほうは既に実用化しているタイプのモジュールにおける記録、カネカ社のほうは研究開発段階のモジュールでの記録と、2社で条件はかなり異なっています。

しかし、成熟した方式と見られている結晶シリコン型(HIT型を含む)において、近い時期に変換効率の記録更新が相次いで発表されたのは、偶然かもしれませんが非常に興味深いことであり、結晶シリコン型の可能性が尽きていないことを感じます。

また面白いのは、両方ともセルを通常(正方形)の半分にしたかたちで、モジュールに用いていると見受けられる点です。

実際にTrina社のセル枚数は120枚、カネカ社のセル枚数は108枚と多く、またカネカ社のプレスリリース[2]の掲載写真からは、短冊形の細長いセルを12枚×9枚並べていることが推測されます。

この方式が、結晶シリコン型での変換効率向上において一般的な手法となっていくのかは、今後注目していきたいところです。


※参照資料:
[1]Trina Solar Announces New World Record of 19.86% Aperture Efficiency for "Honey Plus" Multicrystalline Silicon Solar Module(Trina Solar社)
http://ir.trinasolar.com/phoenix.zhtml?c=206405&p=irol-newsArticle&ID=2212445
[2]結晶シリコン太陽電池モジュールで世界最高変換効率24.37%を達成(カネカ)
http://www.kaneka.co.jp/service/news/161027

※関連記事:

シャープが椅子型「ソーラー充電スタンド」を開発、人工衛星などに使われる高高率な化合物型太陽電池モジュールを搭載

※2016/10/31 9:31 記事タイトルと記事内の企業名に誤りがあったため修正しました。
不手際を深くお詫び申し上げます。


シャープ社が2016年10月26日に、

  • 高効率の化合物太陽電池(人工衛星などに使用)を用いる椅子型の「ソーラー充電スタンド」を開発した。
と発表していました[1]。

概要は次の通り。


  • 主な特徴
    椅子に太陽電池モジュール・蓄電池・USBポートを搭載している。
    • 屋外(テラス席など)に設置して発電し、蓄電池に蓄電。
      利用者は椅子に座ってコーヒー等を飲みつつ、スマートフォン等を充電できる。
    • 蓄電池により、日照時間が少ない場合でも充電可能になる。
    • 椅子型のため、移動が簡単に行える。
  • 搭載機器
    • 太陽電池モジュール:化合物型(変換効率約30%)
      椅子の背もたれの裏側に設置している。
    • 蓄電池:座面の下に搭載している。
    • USBポート:座面の後ろ端に搭載。
  • 実際の導入
    公益財団法人東京都環境公社の「シティチャージ普及促進事業」に採用されており、都内のコーヒーショップ3店舗に、2016年10月下旬から設置されていく予定。

シャープは今年5月に化合物3接合型モジュールの地上用途での展開方針を発表しており、今回の椅子型スタンドはその第一号と思われますが、宇宙用で使われるタイプの太陽電池が、身近な日用品である椅子と組み合わせられたところに、強いインパクトを感じます。

椅子の座面は、太陽光発電による充電を考慮した可動式(角度を変えられる)と見受けられますが、人が座っている際には太陽電池側がオーバーハング(地面を向く)になるので、発電能力は落ちるはず。

太陽電池モジュールのサイズも大きくは無く、太陽光発電の環境としては厳しいはずですが、高性能な化合物型の採用は、その条件を克服するためなのかもしれません。

また、同じ「シティチャージ普及促進事業」で先に採用されたソーラー充電スタンドは、後に販売価格250万円で発表されましたが、今回の化合物型を用いた椅子型は、市販する場合いったいどのぐらいの価格になるのか、興味を惹かれるところです。


※参照資料:
[1]高効率な化合物太陽電池でスマートフォンを充電できる椅子型「ソーラー充電スタンド」を開発(シャープ社)
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/161026-a.html
[2]スターバックスに新型シティチャージを設置します(クール・ネット東京)
https://www.tokyo-co2down.jp/page.jsp?id=6989

※関連記事:

2016年10月24日

パナソニックとTesla Motors社が、Tesla社工場でパナ社の太陽電池セル・モジュールを生産することを検討開始

パナソニックTesla Motors社が2016年10月18日に、

  • 両社が協業太陽電池セル・モジュールを生産することを、検討開始する。
と発表していました[1][2]。

概要は次の通り。


  • 合意の内容
    • テスラ社の米バッファロー工場(ニューヨーク州)において、パナソニックの太陽電池セル・モジュールを生産協業すること(※北米市場向け)を検討するにあたり、両社が法的拘束力の無い意向表明書を締結した。
    • 今回の合意は、以前に電気自動車や蓄電池分野において、パナ社とテスラ社が結んだ関係を拡張するものである。
  • 今後の展開
    • 今後は
      ・パナソニック社が太陽電池分野で持つ技術・製造力
      ・テスラ社が持つ強い販売力
      の相乗効果など、両社の強みを生かす協業を検討していく予定。
    • テスラ社では、自社の蓄電池「Powerwall」「Powerpack」とシームレスに連動する太陽光発電システムにおいて、今回の生産品を用いることを想定している。
      (同社は幅広い太陽光発電サービスを手がけるSolarCity社を買収しており、住宅用・商業用・大規模分野で事業を展開することを考えている)

日本の太陽電池メーカーは国内市場縮小の影響を強く受けていることから、海外市場での販売拡大が急務になっていると推測され、今回の提携も、パナ社としては米国市場での販売強化を狙ったものと思われます。

またテスラ社としても、パナ社が太陽光発電分野で持つ技術(HIT太陽電池など)を高く評価していることが伺えます。

テスラ社は電気自動車メーカーとしてのイメージが強いですが、SolarCity社を既に買収していることから、パナ社との協業が本格化した場合は、太陽光発電分野での販売力は十分に期待できるものと考えます。

今回はまだ「法的拘束力の無い意向表明書」の段階ですが、海外市場における日本メーカー巻き返しの動きの一つとなることを、期待したいものです。


※参照資料:
[1]米・テスラモーターズと太陽電池分野での協業に向けた検討を開始(パナソニック社)
http://news.panasonic.com/jp/press/data/2016/10/jn161018-5/jn161018-5.html
[2]Tesla and Panasonic to Collaborate on Photovoltaic Cell and Module Production in Buffalo, New York(Tesla社)
https://www.tesla.com/jp/blog/tesla-and-panasonic-collaborate
[3]SolarCity
http://www.solarcity.com/

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | メーカー:パナソニック

2016年10月17日

オムロンが小型パワコン「KPM2シリーズ」を発表、従来機種から入力電流・電圧を拡大し、高効率パネルへの置き換えや「過積載」に対応

オムロン社が2016年10月13日に、屋外設置型の小型パワコンの新機種「KPM2シリーズ」を発表していました[1]。

これは従来機種「KPMシリーズ」を強化したもので、概要は次の通り。


  • 主な特徴
    入力電流を拡大1回路あたりの入力電流(従来機種9.5A)は11A。
    これにより、従来より高効率(高電流)の太陽電池パネルにも対応できる。
    (※2016年のFIT法改正では、パネル等の設備変更も可能になっている)
    入力電圧も拡大入力電圧の最大値(従来機種400V)は450V。
    これにより、パワコン容量以上の太陽電池パネルの設置過積載)が可能になり、売電収入のアップが期待できる。
    施工性・耐環境性を向上
    • 製品裏面に「隠ぺい配線口カバー」を追加(防水性能を強化)
    • 製品下部に配線用のPF管用口を新設
      (従来機種(KPMシリーズ)で必要だった、パテ埋めの工数を削減できる)
    出力制御に対応<2015年1月の省令改正で導入された出力制御に対応している。/td>
  • 種類(形式):KP44M2-J4、KP55M2-J4、KP44M2-SJ4、KP55M2-SJ4
  • 発売時期2016年12月の予定

FIT導入を背景にヒット商品となった「KPMシリーズ」のバージョンアップ版であるだけに、現在の国内の住宅用や低圧市場における需要のトレンドを、敏感に反映した仕様変更と推測されます。

その中で目立つのは、「高効率パネルへの置き換え」や「パネルの過積載」への対応であり、「指定ルール」の導入電力買取価格の引き下げといった悪条件により減速が際立つ国内太陽光発電市場において、収益性(売電量)アップへの指向が、より強くなっているのかもしれません。

一方で今回の製品発表では

  • 「自らが使用する電力をより安価に自らで作る「自家消費」への移行が進む」
との記述がありますが、それに対する特段の対応は(今回の新製品に)見受けられません。

もっともこの点は根本的に、蓄電技術(バッテリー、水素利用など)のコストダウンや実用化が進まなければ、パワコン機種の改良だけでは如何ともできないことだとは思われます。


※参照資料:
[1]機能アップにより太陽光発電システムの総発電量向上をサポート 屋外単相パワーコンディショナ「KPM2シリーズ」の発売について(オムロン社)
http://www.omron.co.jp/press/2016/10/c1013.html

※関連記事:

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | パワーコンディショナー

南アフリカのGeorge空港が太陽光発電設備(750kW)を導入、コストダウンに大きく寄与

AFPBBの記事(2016年10月日付[1])で、南アフリカの空港における太陽光発電設備の導入事例が紹介されていました。

設備の概要は次の通り。


空港の場所南アフリカの都市George
発電設備の設置場所滑走路(管制塔などから数百メートル離れている)に隣接した土地
発電容量750kW
太陽電池パネル2000枚を設置。
初期費用1600万ランド(約1億1500万円)
発電電力の用途空港内の管制塔、エスカレーター、チェックインカウンター、荷物運搬用コンベヤー、レストラン、ATM等に用いている。
また余剰分は、地域の送電網に供給している。
(※空港の運営に必要な電力は400kW
導入効果
  • 導入以来、空港のCO2排出量1229t削減した。
    燃料10万3934L分に相当)
  • 電気料金年間40%削減
    (初期費用をあと5〜10年で回収できる見通し)

数字的には、発電能力は空港の必要電力を大きく上回っていますが、電気料金の削減分は4割のみであり、日照が無い夜間の電力供給ができないことも含めて、流石に完全に電力需要を賄うことは無理なようです。

とはいえ、燃料の節約量と、電気料金の具体的な削減割合からは、日本で想像する以上に太陽光発電の導入メリットが大きいと感じますが、この点は近年の初期費用の急速な低減に加えて、(米国のカリフォルニア州などと同様に)日照時間が長いことによる恩恵かと思われます。

また再エネの導入においては、電力系統に及ぼす影響が気になるところですが、南アフリカは近年電力不足が続いている[4]とのことなので、まずは系統の安定性よりも発電能力の拡大・増強が優先、ということなのかもしれません。

その意味で、南アをはじめとする新興国で、再エネ発電設備を含む電力インフラがどのような整備の仕方を見せていくのか(先進国とどう異なる道筋を辿るのか、独立電源が優位となるのか等)、というのは非常に興味を惹かれるところです。


※参照資料:
[1]アフリカ大陸初の太陽光発電空港、環境や経費に貢献 南ア(AFPBB)
http://www.afpbb.com/articles/-/3104226
[2]George Airport
http://www.airports.co.za/airports/george-airport
[3]ジョージ (南アフリカ共和国)(ウィキペディア)
[4]主要産業(ウィキペディア「南アフリカ共和国」内)

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 発展途上国での導入

2016年10月10日

英国で2016/4-9の6ヶ月間に、太陽光発電の電力量が石炭火力を上回る

ウェブサイト「CarbonBrief」で2016年10月4日に、

  • 英国で6ヶ月間にわたり、太陽光発電による発電電力量が、石炭火力のそれを上回った
との調査結果[1]が掲載されていました。

今回はその中から、幾つかの数字を抜き出してみました。


発電電力量(2016年4月〜9月

発電電力量電力需要に占める割合
太陽光発電6964GWh5.2%
石炭火力発電6342GWh4.7%

発電電力量の変化

※2016年初め〜現在([1]の時点)までの数値と、前年同期との比較。

前年同期比
太陽光発電26%増
石炭火力発電65%減

太陽光発電の導入量

※「Solar Intelligence」による調査結果。

現在([1]の時点)まで12GW
2015年の初め約6GW

ただし2016年の新規導入量は減少しており、これは補助金の削減による。


CarbonBriefによる同種の報告は6月にもありましたが、今回は半年間に渡る実績値ということで、太陽光発電による発電電力は(季節による変動があるとはいえ)一定の水準を確保しつつあると感じます。

ただし電力需要に占める割合(半年間で5.2%)は、5月・7月の単月(各々5.9%・5.6%)を下回っており、継続的な伸びは感じられません。

これは、今年に入って太陽光発電設備の新規導入のペースが下がっている(=発電容量の伸びが鈍っている)ためと思われますが、それ故に今後は、同種の調査結果での数字の伸びも停滞するのではないでしょうか。

他方で、石炭火力の減少ぶりの凄まじさは際立っていますが、これはガス火力へのシフトによるものとのことなので、太陽光発電の出力変動に対する対応力は、変わらずキープされているものと想像します。


※参照資料:
[1]Analysis: UK solar beats coal over half a year(CarbonBrief)
https://www.carbonbrief.org/analysis-uk-solar-beats-coal-over-half-year
[2]イギリス、太陽光による発電量が半年間に渡って石炭火力の発電量を上回る(businessnewsline)
http://business.newsln.jp/news/201610050545140000.html

※関連記事:

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 電力供給の実績

2016年10月03日

兵庫県西脇市の市営発電所で、モジュール・パワコン間の電線(総延長3900m)が切断・盗難

兵庫県の西脇市が2016年10月1日に、

  • 市営の太陽光発電所(多可町中区)で大量の電線切断・盗難されたため、兵庫県西脇署に被害届を提出した。
と発表したとのことです[1][2]。

概要は次の通り。


  • 発覚の経緯
    9月29日に市役所のモニターで異常を確認。(同月22日から発電量がゼロになっていた)
    保守点検の委託業者に連絡したところ、発電所入り口の鍵が壊され電線が盗まれていることが、29日中に確認された。
  • 盗難された物
    太陽電池パネルとパワコンを結ぶ電線(総延長約3900m)
  • 損失
    • 盗難の損害額:約370万
    • 発電停止による損害:約19万円/日
  • 復旧までにかかる日数:1週間〜10日間の見込み

太陽光発電所ではないものの、個人的に経験したり(職場が被害にあったり)他所の会社について見聞きしたこととして、この手の設備・機器の盗難においては警察が本気にならない場合が多く、また犯人が例え捕まったとしても犯人からの賠償はされず、結果として「盗んだもの勝ち」(刑務所に入っても数年で出てくる)なのが、非常に胸糞悪いところです。

それはともかく、以前は太陽電池パネルの盗難が目立っていましたが、最近は電線の盗難が多くなっている気がします。

その理由は不明ですが、架台に固定されているパネルよりも、電線のほうが盗むのが簡単ということであれば、電線の損壊・盗難を未然に防ぐ方法が欲しいものです。

特に最近は、太陽光発電所に投資するファンドもあるので、その信頼性を高めるためにも、設備・機器の盗難などに対する(監視システムのような後手だけではない)対策を、進化させていく必要があると考えます。


※参照資料:
[1]電線370万円相当 市営の太陽光発電所で 西脇 /兵庫(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20161001/ddl/k28/040/457000c
[2]電線総延長約4キロ分盗まれ、発電不能に 兵庫・西脇市の太陽光発電所(産経WEST)
http://www.sankei.com/west/news/161001/wst1610010046-n1.html
[3]西脇市太陽光発電所が完成(西脇市)
http://www.city.nishiwaki.lg.jp/kurashi/kankyogomi/kankyogyoseitorikumi/1448515126337.html

※関連記事:

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トクヤマ社がマレーシア子会社を韓国OCI社に譲渡する方針、事業強化に最善と判断

トクヤマ社が2016年9月27日に、

  • 多結晶シリコン製造の子会社「トクヤママレーシア」を、韓国のOCI社に譲渡する。
との方針を発表していました[1]。

その背景は次の通り。


  • トクヤマ社は2009年8月に、太陽電池や半導体向けの多結晶シリコン事業拡大を目的に、マレーシアのサラワク州に「トクヤママレーシア」を設立した。
  • しかしその後
    • 生産設備における技術的問題の発生
    • 太陽電池向け多結晶シリコン市況の大幅な悪化
    により、2度にわたり巨額な減損損失を計上した。
  • その後は事業継続に向け、設備の改良や生産性向上の努力を重ねた結果、一定の生産性確保を実現したが、トクヤママレーシアの事業構造をより強固にするためには、OCI社への譲渡が最善の選択と判断した。

マレーシア工場を巡る紆余曲折については、東洋経済の記事[2]に詳しく書かれていますが

  • 市況の急激な変化
    (中国メーカー等の新規参入による供給量の急増、シリコン価格の急落)
  • 最先端の析出装置(海外メーカーから調達)の重大欠陥による生産停止
と、外的・内的の両方で巨大なマイナス要因が生じたことは、トクヤマ社にとって甚だしく無念だったと想像します。

かつては太陽電池市場の世界的な拡大、そして日本におけるFITの開始を背景に、有望事業として大きな期待がかけられていた筈ですが、現在は例えば米国で中国製モジュールのコストが40〜55セント/Wとのことであり、最重要素材である結晶シリコンの価格競争も、想像を遥かに超えて激化したことが容易に推測されます。

トクヤマ社の日本国内でのシリコン生産については、今回の発表で全く言及されていないので、そちらの生産体制は維持されると思われますが、モジュールだけでなく原材料でも、日本企業が置かれている環境の厳しさが伺えます。


※参照資料:
[1]子会社の第三者割当による新株発行及び子会社株式譲渡による子会社の異動に関するお知らせ(トクヤマ社)
https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/2016/20160927_Release.pdf
[2]太陽電池で大ヤケド、"名門"トクヤマの失態(東洋経済オンライン)
http://toyokeizai.net/articles/-/103260

※関連記事:

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 多結晶シリコン

米国での中国製太陽電池パネル価格は40〜55セント/W、中国市場での供給過剰が遠因

2016年9月29日の「日経テクノロジーonline」の記事[1]で、米国の太陽光発電市場の現状が紹介されていました。

ここではその中から、特に興味深いと思ったデータ等を抜き出してみました。


2016年の米国市場の規模

※「U.S. Solar Market Insight Q2 2016」(SEIAとGTM Researchが発表)から。

  • 2Qの導入量:2GW(前年同期比43%増)
  • 通年の市場規模予想:約14GW(前年比85%増)
    うち70%以上が「Utility」セグメントとみられる。

太陽電池パネルの価格

※SPV Market Research社のPaula Mints氏による。

  • 米国における中国製パネルの価格40〜55セント/W
    ※これは反ダンピング関税も含んでの水準。
  • 背景
    中国では
    • 政府が要求していた2016年の設置容量:15GW
    • 同年のメーカーからの供給量予想:約28GW
      (国内市場に期待して大量生産された結果)
    と、パネルの供給が大幅過剰になっている。
    この過剰パネルの有望な行き場として、米国とインドが挙げられ、米国ではパネル価格が大幅に下落した。

住宅用におけるネットメータリング制度改定の影響

※Lawrence Berkeley National LaboratoryのGalen Barbose氏による。

  • 実例
    アリゾナ州の電力会社「Salt River Project」は、2014年末に住宅用にデマンド・チャージ課金制度を導入。
    その結果、系統接続の申し込み数は
    • 2014年4Q:3565
    • 2015年1Q:64
    と激減した。
  • 理由
    一般住宅の最大需要は、主に夕方や早朝に起こる。
    これは太陽光発電の発電ピークと合わず、太陽光発電によるデマンドチャージ引き下げが期待できない。

太陽電池パネルのコストは、つい数年前までは「1ドル/W」が目標とされていましたが、米国では2013年に0.65ドル/Wに到達

そして今回はそれも大きく下回っており、大手メーカーの業績発表で軒並み価格競争の厳しさが挙げられていたことも、合点が行きます。

とはいえその背景になっているのが、中国市場における地元メーカーによる供給過剰となると、Suntech Powerの主要子会社(無錫サンテック)独Qcellsが経営破たんし、中国大手メーカーが軒並み長期の赤字に陥った、ほんの数年前の苦い記憶が蘇ります。

もっとも今回は、米国でICT(投資税額控除)の5年延長が決定していることから、少なくともその期間は、米国市場での需要が維持されるのかもしれません。

ただし、もう1つの有望市場とされるインドについては

といった状況がまだ続いているのであれば、価格競争力が強いとはいえ、簡単には行かないようにも思われます。


もうひとつ米国市場で気になるのは、住宅用設備の(電力料金削減における)メリットが削られる見込み、ということです。

2016年通年の予想導入量の約7割が大規模設備となると、住宅用の導入ペース減速が及ぼす影響は限られるとは思います。

しかし、従来のように単純な(需給の)電力量の差し引きではなく、リアルタイムの需給を反映した制度に移行する動きが出ているのは、米国においても(日本と同様に)太陽光発電の大量導入に伴う電力系統の安定維持が、より大きな課題となってきていることの表れだと思われます。

発電設備の導入・運営コストを低減するだけでなく、蓄電池にしろ水素利用にしろ、電力需給のマッチングを高度に実現できる(そしてコスト面で十分に実用可能な)手段を確立することが、再エネの本格普及における抜き差しならない課題なのではないでしょうか。


※参照資料:
[1]米太陽光発電市場は安泰!?、パネル価格は40セント/W!(日経テクノロジーonline)
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/286991/092700032/
[2]米加州の「ネットメータリング」制度が改正へ(同上)
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/286991/010700011/

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 市場・業界の動向:欧米