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2017年04月27日

Trina Solar社が「Fortune Solar Holdings」による子会社化で株式非公開に、今後は更に投資家コンソーシアムが買収する予定

既に1ヶ月以上前になりますが、Trina Solar社が2017年3月13日に、

  • Red Viburnum Company Limited」(※「Fortune Solar Holdings Limited」の完全子会社)との合併を完了した。
と発表していました[1]。

今回は、Trina社の過去の発表[2]〜[4]、またBloombergの報道[5]と合わせて、この合併に関して読み取れる主な情報を抜き出してみました。


<合併の経緯と予定>

2016/8/1 「Fortune Solar」「Red Viburnum」との間で合併契約締結した。
存続会社はTrina Solar。
この合併において、Trina社の普通株式1株は、現金0.232米ドルを受け取る権利と交換される。
同12/16 臨時株主総会を開催。
株主投票により、この合併計画の承認(議決権の2/3以上が必要)を求める。
(※Trina社の会長兼創設者であるGao氏は、議決権の約5.5%を保有している)
2017/3/13 合併契約完了した。
これによりTrina社は、Fortune Solarの完全子会社となり、上場会社ではなくなった。
その後の予定 合併後のTrina社は、投資家のコンソーシアムにより買い取られる計画。
これは全て、現金により行われる。(買取額は11億ドルの見込み)
投資家コンソーシアムのメンバーは、
  • Trina社の会長兼創設者Gao氏
  • 「Shanghai Xingsheng Equity Investment & Management Co., Ltd.」
  • 「Shanghai Xingjing Investment Management Co., Ltd.」
  • 「Great Zhongou Asset Management (Shanghai) Co., Ltd.」
  • 「Liuan Xinshi Asset Management Co., Ltd.」
など。
(※ただし、この買収が何時実施されるのかは、記載が無い。)

また、この非公開化を目指す背景・理由について、Trina社の発表[1]〜[3]には全く記載がありません。

ただしBloombergの記事[4]では、次のような内容の記述があります。


  • 今回の買収は、
    • 太陽電池パネルの設置は記録を更新しているが、メーカーの利益回復していない
    という状況を反映している。
  • Trina社は、何年も損失を出してきた。
    これは
    • 技術コストの高騰
    • 過剰供給
    の結果である。
  • Trina社は2013年に黒字化し、更に2014年にはYingli Green Energy社を追い越して、最大の太陽電池パネルメーカーになった。
  • 太陽電池パネルの価格は
    • 供給過剰
    • 低い参入障壁
    により、過去3〜4に渡って打撃を受けている


親会社となった「Fortune Solar Holdings」については、企業の公式サイトは見つからず。

Bloombergのサイト[5]でも、殆ど情報が掲載されておらず、非公開企業(Private Company)であることしか判りません。

ただ今回の合併において、Trina社については、最終的に投資家コンソーシアム(創業者を含む)の手に渡る予定とのこと。

そのため、Fortune Solar社が本格的・長期的に経営に関わったり、ましてやTrinaのブランドが変わる可能性は、ほぼ無いものと考えます。


株式の非公開化は、その企業にとってデメリットが大きいのでは?と思っていましたが、実際には米国では意外にも、売上高10億ドル超の大企業でも、非公開企業が多いそうです[6]。

現在の太陽電池パネル市場に目を向けると、製品価格の低下が著しく、他の大手メーカーでも利益率の低下が顕著な状況。

そのため今回のTrina社の動きについても、株主への配慮(短期的な業績アップ)が必要な株式上場の継続は、企業の長期的な運営・存続を目指すうえでデメリットのほうが大きい、と判断されたものと推測します。


最後に、Bloombergの記事で一つ気付くのは、パネル価格が「打撃を受け」始めたのは3〜4年前(2013〜2014年)ですが、これはちょうどTrina社がメーカー首位になった年(2014年)と重なります。

かつてのSuntech PowerQ-cellsの事例もありますが、太陽電池パネル市場において、生産量・出荷量が世界トップとなることは、一般的な(1位が良いという)イメージとは反対に、どうやら決して良いこととは言えないようです。

また、(販売規模や価格競争力を追い求めるのではなく)得意分野や付加価値などで独自のポジションを築いていくことが、長期的に日本メーカーが生き残っていく道なのでは・・・とも考えさせられます。


※参照資料:
[1]Trina Solar Limited Announces Completion of Going-Private Transaction(Trina Solar社、2017/3/13発表)
http://ir.trinasolar.com/phoenix.zhtml?c=206405&p=irol-newsArticle&ID=2253566
[2]Trina Solar Enters into Definitive Agreement for Going Private Transaction(同上、2016/8/1発表)
http://ir.trinasolar.com/phoenix.zhtml?c=206405&p=irol-newsArticle_print&ID=2191453
[3]Trina Solar Announces Extraordinary General Meeting of Shareholders(同上、2016/11/7発表)
http://ir.trinasolar.com/phoenix.zhtml?c=206405&p=irol-newsArticle_print&ID=2219967
[4]Trina Takes Biggest Solar Maker Private in $1.1 Billion Deal(Bloombergの記事、2016/8/1付)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-08-01/trina-solar-to-go-private-in-1-1-billion-deal-led-by-chairman
[5]fortune solar holdings ltd(Bloomberg)
https://www.bloomberg.com/profiles/companies/1430124D:US-fortune-solar-holdings-ltd
[6]米国における非公開企業と非公開化の動向(日本政策投資銀行、2006年3月)
http://www.dbj.jp/reportshift/area/newyork/pdf_all/mini0603.pdf

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | その他

2017年04月23日

福岡市の太陽電池モジュールメーカー「ZEN POWER」が倒産、欧州取引先の倒産などで売上が急減・事業停止状態に

東京商工リサーチが2017年4月に、

  • 福岡市の太陽電池モジュールメーカー「ZEN POWER」が倒産した。
と発表していました[1]。

概要は次の通り。


背景・経緯
  • ZEN POWER社は、2013年10月に現在地(福岡市内)に移転。
    主に太陽電池モジュールの組立・販売を手掛け、日本国内・海外に販売していた。
    (※工場は福岡県久山町に開設)
  • 業績は2014年まで好調だったが、
    • 資金繰りの悪化(大口取引先のドイツ企業に、多額の不良債権が発生)
    • 欧州での太陽電池モジュール価格の下落
    • 日本国内での再エネ買取価格の引き下げ
    等、市況が急激に悪化し、2015年は売上が急減。
    同年末までに社員を解雇し、事実上の事業停止状態になっていた。
  • 売上高は、
    • 平成26年(2014年)12月期:約74億円
    • 平成27年(2015年)12月期:約5500万円
負債総額 約52億円
破産開始の決定日 2017/4/5


九州の地場モジュールメーカーの経営破綻と言えば、2012年のYOCASOL社を思い起こします。

ただ、同社の負債額は25億円弱で、今回のZEN POWER社はその2倍以上。

またYOCASOL社の破綻では、他の太陽光発電関連企業が事業資産の買取・雇用の維持に名乗りを上げていました

しかし今回のZEN POWER社は、既に1年以上前に社員を解雇し、事業が停止状態とのことであり、何らかの形で後につながる見込みが考えづらいのが、残念です。


売上高を見ると、2014年度と2015年度の落差の巨大さに驚かされます。

メインとしていた欧州市場での取引先の倒産というのは、特有の事情ですが、他にもモジュール価格の下落に、日本市場の縮小と、国内外での一般的なマイナス要因が重なり、文字通りの「弱り目に祟り目」となってしまったことが想像されます。


世界全体としてはモジュール需要は伸びていると思われますが、市場環境は悪化が続いており、メーカーでは国内大手の販売減が続き、出荷量を伸ばしている海外大手も、製品価格の低下により明らかに利益率が低下しています

その中で、例えばソーラーフロンティア社は付加価値を高め、国内販売に重点を置く方針とのことですが、もはや単なる大量生産・コストダウンの追及ではなく、そのような生き残りのための大胆な方針の転換が、太陽電池メーカーには必要となっているのかもしれません。


※参照資料:
[1](株)ZEN POWER(東京商工リサーチ)
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20170418_01.html
[2](株)ZEN POWERの謎 なぜ販路はヨーロッパ(Net IB News)
http://www.data-max.co.jp/290420_dm1504/

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 他の国内メーカー

2017年04月22日

Jinko・JA・Canadian・Yingliの2016年業績は、全体として通期では大きく伸びるも、4Qの減速感が目立つ

今回は、世界的な大手モジュールメーカーである

  • JinkoSolar
  • JA Solar
  • Canadian Solar
  • Yingli Solar
2016年4Q(10〜12月)と通期の業績発表が、ようやく出揃った[1]〜[4]ので、それらの中から、主な数字や状況を抜き出してみました。


<2016年4Qと通期の業績>

※カッコ内は前年同期比、「ドル」は米ドル。
※数値の四捨五入や、一部の数値は、当ブログ管理人が計算。
※企業の掲載順は、プレスリリースの発表順。

モジュール出荷量 売上高 粗利益率
4Q通期 4Q通期 4Q通期
Jinko 1733MW
(1.3%)
6656MW
(47.5%)
7.4億ドル
(13.7%)
31億ドル
(38.5%)
14.3%
(4.7ポイント)
18.1%
(0.9p)
JA 1353MW
(4.3%)
※外部向けのみ
4606MW
(25.4%)
※左に同じ
5.7億ドル
(13.1%)
23億ドル
(21%)
12.9%
(4.2p)
14.6%
(2.4p)
Canadian 1581MW
(13%)
5232MW
(11%)
6.7億ドル
(40%)
29億ドル
(18%)
7.3%
(10.6p)
14.6%
(2p)
Yingli 635MW
(26%)
※自社向け含む
2170MW
(11%)
※左に同じ
2.9億ドル
(3%)
12億ドル
(16%)
7.0%
(4.8p)
13.8%
(1.9p)

<背景、今後の見通し>

JinkoSolar
  • 中国は、JinkoSolar社にとって最大市場であり続けている。
    2017年の前半は、同6月のFITカットを前に、駆け込み需要が続くとみられる。
    いっぽう後半は、需要が和らぐ可能性がある。
  • 米国では、4Qは平均販売価格(ASP)が鋭く低下した。
    しかし2017年に入ってからは、安定し始めている。
JA Solar
  • 4Qの市場は全体として、挑戦的な環境が続いた。
  • アジア(特に中国)の需要が強く、APAC地域が総出荷量の83%超を占めた。
  • 中国での需要は、2017年前半まで堅調だが、後半減速すると予想。
Canadian Solar
  • 4Qの粗利益率の低下は、前年度の売上に関わる相殺関税・反ダンピング関税(AD/CVD)による。
    (※この費用が無ければ13.9%)
  • 4Qのモジュール出荷量の地域別割合では、米州向け(20%)が前年同期から30ポイント以上低下
    代わりにアジア向け(63%)が20ポイント増、欧州など向け(17%)が10ポイント増。
  • 4QのモジュールのASPは、前年同期から低下した。
Yingli Solar
  • 4Qは中国・日本で需要が伸び(特に中国)、モジュール出荷量は3Qから74%増えた。
    4Qの出荷量に占めた割合は、
    • 中国向け:約75
    • 日本向け:約20
    これら2市場は、2017年も2大重要市場であり続けると予想する。
  • ただし4Qの自社のASPは、世界的・全体的な販売価格の低下に伴い低下した。
  • 通期の出荷量の減少は、タイトなキャッシュフロー(2015年半ば〜)による、工場稼働率の低下による。


当ブログでモジュールメーカーの業績発表をちょくちょく見るのは、それを通して太陽電池モジュール市場の現状(地域別の需要や、販売価格の変化など)を知ろう、という狙いがありますが、中国大手を中心とする今回の4社の業績も、なかなか興味深い内容です。


まずモジュール出荷量は、工場稼働率が低下しているYingliを除いて、2016年通期は(前年から)大きく増加。

ただし、伸び率を4Qと通期で比べると、Canadian Solarはほぼ同じですが、JinkoとJAは差が非常に大きくなっています。(4Qの伸び率が低い)

売上高の増減を見ても、Yingliを除く3社で、4Qは(通期と対照的に)減速感が目立つ状況。

粗利益率に至っては、Canadian Solarの特殊な状況(AD/CVDの負担)を差し引いても、4社とも4Qは(通期よりも)明らかに悪くなっており、モジュールの価格低下を背景に、直近ほど厳しい事業環境となっていることが想像されます。


業績の背景に目を向けると、4Qはアジア(特に中国)向けの販売が好調だったことが、4社とも共通しています。

ただ、中国国内向けの販売価格が(他の地域より)低いことは、過去の業績発表の中でもたびたび言及されていました。

そのため、その中国向けの販売量が伸びたことが、4Qの売上高の伸びの減速・粗利益率の低下につながったと考えられます。


もっともその中国需要についても、好調なのは今年(2017年)の前半まで、との予想。

そのため、中国以外の地域で販売を伸ばせるか否かが、これら4社の2017年業績を大きく左右すると思われます。

ただし米国の重要市場の一部カテゴリ(分散型)において、中国製モジュール(そして中国メーカー)が、品質とサポートの点から信頼を失った事例があり[5]、本社がカナダのCanadian Solarは少し別としても、中国メーカーが中国以外の市場で確固たる地位を築いていくのは、そう簡単では無いように思われます。

特にYingli社は、つい最近(今年2月)にも、資本の不足によってニューヨーク証券取引所から警告を受けており[6]、経営の安定化が、引き続き大きな課題となりそうです。


最後に、モジュール出荷量で世界首位を争う筈のTrina Solar社については、4月に入っても一向に2016年業績が発表されず、何事かと思っていましたが・・・

3月の発表[7]によると、「Fortune Solar Holdings Limited」の子会社「Red Viburnum Company Limited」との合併を完了し、これに伴い上場は廃止し、Fortune Solar Holdingsの子会社となったとのことで、これが関係しているものと思われます。(法律上の扱い等、正確な事情は判りませんが)

ともかく、太陽電池モジュール販売で世界トップクラスのTrina Solar社でさえ、買収の対象となってしまうところには、現在の太陽電子モジュール市場の環境の不安定さを、極めて強く感じざるを得ません。


※参照資料:
[1]JinkoSolar Announces Fourth Quarter and Full Year 2016 Financial Results(JinkoSolar社、2017/2/27発表)
http://jinkosolar.com/press_detail_1284.html
[2]JA Solar Announces Fourth Quarter and Fiscal Year 2016 Results(JA Solar社、2017/3/16発表)
http://investors.jasolar.com/phoenix.zhtml?c=208005&p=irol-newsArticle&ID=2254666
[3]Canadian Solar Reports Fourth Quarter and Full Year 2016 Results(Canadian Solar社、2017/3/21発表)
http://investors.canadiansolar.com/phoenix.zhtml?c=196781&p=irol-newsArticle&ID=2255424
[4]Yingli Green Energy Reports Fourth Quarter and Full Year 2016 Results(Yingli Solar社、2017/4/13発表)
http://ir.yinglisolar.com/phoenix.zhtml?c=213018&p=irol-newsArticle&ID=2261811
[5]米加州の太陽光パネルシェア、分散型では「米国製」が2強(日経テクノロジーオンライン、2017/4/10付)
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/286991/040600045/
[6]Yingli Green Energy Receives Notice from NYSE of Falling Below Continued Listing Standards(Yingli Solar社、2017/2/15発表)
http://ir.yinglisolar.com/phoenix.zhtml?c=213018&p=irol-newsArticle&ID=2246431
[7]Trina Solar Limited Announces Completion of Going-Private Transaction(Trina Solar社、2017/3/13発表)
http://ir.trinasolar.com/phoenix.zhtml?c=206405&p=irol-newsArticle&ID=2253566

※関連記事:

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 中国メーカー

2017年04月10日

積水化学工業が「フィルム型色素増感太陽電池」の事業化予定を発表、電子広告やIoTセンサーの電源に

積水化学工業2017年3月29日に、

  • フィルム型色素増感太陽電池」の事業化予定
を発表していました[1]。

概要は次の通り。


<フィルム型色素増感太陽電池の特徴・メリット>

低照度で発電可能 500ルクス以下で発電できるので、屋内などでも使用できる。
薄く軽量 プラスチックフィルムを基板としており、厚さは1mm以下、重さはガラスの1/10以下。
加工・設置がしやすい 曲がるため、曲面への設置が可能。
また、貼付による取付もできる。

<生産技術・体制>

  • 量産技術の完成
    ロール・ツー・ロール量産技術を完成した。
    電極形成→染色→サブモジュール組立を、室温下で連続して行える。
  • パイロット生産機の導入
    自社の「つくば事業所」に、生産能力2万m2/年のパイロット生産機を導入した。

<今後の予定>

  • 採用機器
    この太陽電池を独立電源に用いる
    • 電子看板・POP(パートナー企業と共同し、昨年12月開催の「エコプロ2016」で参考出展)
    • IoTセンサー(Secual社との共同開発を開始[2])
    を、2017年度に発売する。
  • 売上規模
    2025年度に売上高100億円/年の規模を目指す。

2013年時点の目標(2015年度の市場参入)から2年ほど遅れたとは言え、色素増感型太陽電池がようやく、事業化が目前というところまでまで来たようです。

太陽電池単体での販売には言及されていませんが、今回のフィルム型の特徴からすると、(変換効率の高さが要求される)モジュール製品として販売するよりは、用途・設置場所が明確な小型機器と最初から組み合わせるほうが、販売量の拡大が見込める、ということなのかもしれません。

また色素増感型ということで気になるのは、太陽電池の寿命がどの程度の年数なのか、ということですが、その点でも(機器自体の寿命が短そうな)小型機器との組み合わせは、合理的と思われます。

加えて低コストでの製造も期待できることから、今回の事業化が、太陽電池の新たな世界(思わぬ用途など)を見せてくれることを、強く期待したいところです。


※参照資料:
[1]室温プロセスによるフィルム型色素増感太陽電池 事業化へ(積水化学工業)
https://www.sekisui.co.jp/news/2017/1302064_29186.html
[2]積水化学工業株式会社と フィルム型色素増感太陽電池(DSC)を使った次世代センサーの共同開発を開始しました(Secual社)
http://secual-inc.com/sekisui_dsc2017/

※関連記事:

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 色素増感太陽電池

2017年度発表の太陽光のFIT買取価格は、非住宅・2000kW以上が入札制に移行、住宅用は2019年度分まで決定

1ヶ月近く前になりますが、経済産業省2017年3月14日

  • 2017年度以降のFITの電力買取価格(新規参入者向け)
を発表していました[1]。

その中から、太陽光発電の買取価格を抜き出してみました。


カテゴリ買取価格(1kWhあたり)
2016年度
(※参考用)
2017年度2018年度2019年度
住宅用
(10kW未満)
太陽光のみ出力制御
対応機器の
設置義務なし
31円28円26円24円
あり 33円30円28円26円
ダブル発電
(燃料電池
などと併設)
なし 25円24円
あり 27円26円
非住宅
(10kW以上)
10kW以上2000kW未満 24円+税21円+税未決定未決定
2000kW以上 入札制記載無し記載無し


今回は(太陽光を含め)殆どのカテゴリで、今年度(2017年度)だけでなく、2年度先(2019年度)までの買取価格が決定済み。

この点はこれまでに無かったことであり、各々の発電方式において、導入予定者や事業者が、今後の計画(採算の見通し)を立てやすくする狙いがあるものと推測します。

ただそうだとすれば、太陽光で発電事業者の関心が高い筈の「非住宅」2000kW未満が、今年度分しか決まっていないのは中途半端な気がします。

もっとも一方では、太陽電池モジュール価格の下落が著しい現状で、数年後までの買取価格を適切に決めるのが困難なのも、止むを得ないことだとは思われますが。


いっぽう「非住宅」の2000kW以上はいよいよ、海外ではお馴染みの入札制が導入開始。

海外の巨大プロジェクトでは、3セント/kWhを切る事例がみられますが、日本では(そこまでの水準は考えにくいとしても)果たしてどこまでの低価格が実現できるものなのか、今年10月以降に開始予定の入札に、注目したいと思います。


※参照資料:
[1]再生可能エネルギーの平成29年度の買取価格・賦課金単価等を決定しました(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170314005/20170314005.html

※関連記事:

posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 国内の電力買取制度

2017年04月03日

伊Enel社がメキシコで「Villanueva太陽光発電所」(754MW)を建設開始、建設費用は1MWあたり約86万米ドル

イタリアのEnel社が2017年3月29日に、

  • メキシコで、754MWDCの「Villanueva太陽光発電所」を着工した。
と発表していました[1]。

概要は下記の通り。


<背景>

  • Enel社はメキシコでは現在、子会社EGPMを通じて
    • 風力:675MW
    • 水力:53MW
    の再エネ発電事業(計728MW)を運営している。
    また現在は他に、計530MWの再エネ発電プロジェクト(今回の件除く)が進行中。
  • 2016年3月には同国で、計約1GWの太陽光発電プロジェクト(今回の件含む)について
    • 15の電力供給契約
    等を獲得している。

<「Villanueva太陽光発電所」の概要>

建設場所 Coahuilaコアウイラ)州のViesca
発電容量 754MWDC
※2つのパークの合計。(建設は同時に開始)
※米州の太陽光発電所、またEnel社が世界で手がけるPVプロジェクトの中で、最大規模とのこと。
建設費用 6億5000万米ドルの見込み
発電電力量 年間1700GWhの見込み
スケジュール
  • 2017/3/29:建設開始
  • 2018年の後半:稼動開始の予定

ちょうど最近には

と、1GW超の太陽光発電プロジェクトが相次いで明らかになっています。

(規模はそれらに及びませんが)今回のメキシコのプロジェクトと合わせて、新興国においては太陽光発電所の大規模化が、一つのトレンドになりつつあると感じられます。

建設コストを見ると、1MWあたりでは単純計算で約86万ドル(1ドル=111円とすると約9600万円)であり、1億円を切っていることに驚きます。

また発電電力量(1700GWh/年)は、発電容量(0.754GW)×約2255と、日本での目安(発電容量×1000)の倍以上であり、メキシコが日本よりも段違いに、太陽光発電に有利な環境(日照時間など)であることが伺えます。

売電の契約額は記載されていませんが、上記の条件を考えると、新興国での昨年の最安値(チリで29.10ドル/MWh)を更に下回るものと想像します。

モジュール価格の急落と日照の豊富さによる、コスト面でのメリットを背景に、新興国での太陽光発電導入がこれからどうスピードアップしていくのかは、引き続き注目していきたいと思います。


※参照資料:
[1]ENEL BEGINS CONSTRUCTION OF THE AMERICAS’ LARGEST SOLAR PHOTOVOLTAIC PLANT(Enel社)
https://www.enelgreenpower.com/en/media/press/d201703-enel-begins-construction-of-the-americas-largest-solar-photovoltaic-plant.html
[2]伊電力エネル、メキシコの米州最大太陽光発電に720億円投資(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK30H05_Q7A330C1000000/
[3]地方行政区(ウィキペディア「メキシコ」内)
[4]コアウイラ州(ウィキペディア)

1366 Technologies社の「Direct Wafer」セルが変換効率19.9%を記録、また同ウエハーを用いる初の商業発電所(500kW)が日本で建設開始

米「1366 Technologies」社が2017年3月8日に、

  • Direct Wafer」によるセル変換効率の記録更新
  • 「Direct Wafer」を用いたモジュールによる、初の商業発電所の建設
を発表していました[1][2]。

その中から、主な情報を抜き出してみました。


<セル変換効率の記録更新>

今回の記録 19.9
Fraunhofer ISE CalLabによって確認された数値。
セルの大きさ 156mm四方
セルの種類 多結晶シリコン型
※「Direct Wafer」は、次の利点を持つ。
  • 高純度な成長環境
    製造過程が従来のインゴット製造よりも、遥かにクリーン。
    またウエハー成長プロセスにおいて、不純物が拡散する時間数秒程度に抑えられる。
    (※通常のインゴット製造では、融点付近で1日以上保持される)
  • 微細構造に優れる
    ウエハー1枚を一度に成長させるため、転移クラスターの発生が回避される。
    (※転移クラスターは、多結晶シリコンインゴットの製造において生じ、ウエハーの品質に大きな影響を及ぼす)
  • ドーピング勾配
    ウエハーの表面・裏面の間で、ドーパント濃度を変更できる。
    これにより、電子の収集の効率を高め、変換効率のアップが可能になる。
    (※インゴットから切り出す従来の単結晶・多結晶ウエハーで、ドーパント濃度を操作する費用効果の高い方法は無い)
他に用いられた技術 Hanwha Q CELLS社の「Q.ANTUM」PERCセルプロセス
(※Hanwha Q CELLS社とは、技術的提携を結んでいる)

<商業発電所での初採用>

建設場所 日本の兵庫県
発電容量 500kW
「Direct Wafer」を12万枚以上用いる。
太陽電池モジュール 中国メーカーにより製造された、IEC認証モジュール。
事業の担当
  • 建設:IHIプラント建設(※IHIの子会社)
  • モジュール調達:1366 Technologie社
スケジュール
  • モジュールの配送:2017/3/3に完了
  • 着工:同3/8時点で着工済み。
  • 稼動開始同年2Qの予定。


実用サイズのセルでの変換効率は、(Hanwha Q CELLS社との提携の効果もあるとは思いますが)既に20%突破が目前の水準に到達。

また今回は、商業発電所の具体的な建設予定も同日に発表しており、ウエハーを(インゴットからの切り出しではなく)直接作る「Direct Wafer」技術の本格的な実用化・商用化が、極めて近い段階にあることが想像されます。

加えて、この革新的技術を用いる初の商業発電所が、日本で建設される(既に着工している)ということも、非常に驚きました。

同発電所の使用モジュールは「中国メーカー」製とのことですが、セルの生産コストが従来の半分で済むという「Direct Wafer」技術について、厳しい価格競争に苦しむ日本のモジュールメーカーがどう見ているのか、というのは気になるところです。


※参照資料:
[1]1366 Technologies Achieves 19.9% Efficiency Using Direct Wafer and Hanwha Q Cells Q.ANTUM Cell Technologies(1366 Technologie社)
http://1366tech.com/2017/03/08/1366-technologies-achieves-19-9-efficiency-using-direct-wafer-hanwha-q-cells-q-antum-cell-technologies/
[2]500 kW Installation for Japan’s IHI Corporation Will Feature More than 120,000 of 1366’s High-Performance Wafers(同上)
http://1366tech.com/2017/03/08/1366-technologies-supplies-direct-wafer-products-first-commercial-solar-array/
[3]Q.ANTUMテクノロジー(Hanwha Q CELLS Japan)
http://www.q-cells.jp/products/pdt_quality/q-antum
[4]産業用太陽光発電システム(IHIプラント建設)
https://www.ipc-ihi.co.jp/solar.html

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