長州産業が2015年12月4日に、化学気相成長(CVD)法で作られる「エピウエハー」を用いたヘテロ接合太陽電池セルについて、研究開発における変換効率の達成値を発表していました[1]。
関連する情報[2]〜[4]と合わせて、概要は下記の通り。
背景
- 従来の単結晶シリコンウエハーの製造では、チョクラルスキー法により作ったインゴットを、ダイヤモンドワイヤーソーでスライスしている。
しかしこの方法には、- 電力消費が大きい
- シリコン単結晶の約半分が、切断屑になってしまう
(典型的なワイヤーソーは直径100μmで、これはウエハーの厚さと同等)
- いっぽう「Crystal Solar」社の製造技術では、CVD法を用いて、シリコン基板(表面を多孔質化、数十回の再利用が可能)の上に単結晶シリコン膜を成長。
この膜が十分な厚さになったら、シリコン基板を剥離する。
この手法により作られるウエハーは「エピウエハー」と呼ばれ、次の利点が期待される。- 製造コストを1/2に低減
- 製造時の電力消費量が、従来の半分以下
- 厚さ100μm未満のウエハーの製造も容易
- 長州産業とCrystal Solar社は共同で、2013年11月から、エピウエハーをヘテロ接合セルに適用する実験を行っている。
開発したセル
- 種類:n型の単結晶シリコンウエハー(Crystal Solar社が提供)を使用。
- サイズ:156mm四方
- 変換効率:
- 2015年6月3日に「Applied Physics Letters」に掲載:22.5%
- その後:23%に到達
「エピウエハー」の製造技術については今年10月に、ドイツにおける開発成果(NexWafe社とFraunhofer ISEによる)が報じられていました[5]が、今回の研究に関わっているのは別の企業。
また多結晶型ウエハーでも、米1366 Technologies社の「Direct Wafer Technology」があり、「シリコンウエハーの直接製造」は、結晶シリコン型太陽電池の更なるコストダウンに向けた、一つの潮流なのかもしれません。
そしてその中で、日本のモジュールメーカーが2年以上前から研究成果を積み重ねていることには驚きました。
長州産業は10月には、バックコンタクト構造の一種「Metal Wrap Through」を用いた成果(セル変換効率21.5%)を発表しており、将来的には、これとエピウエハーが組み合わされる可能性もあるのではないでしょうか。
- [1]太陽電池の研究開発を加速 新手法セルで製造コスト半減、世界最高水準のセル変換効率を実現(長州産業)
- http://www.choshu.co.jp/2015/1204114040.html
- [2]Crystal Solar社
- http://www.xtalsolar.com/
- [3]High efficiency heterojunction solar cells on n-type kerfless mono crystalline silicon wafers by epitaxial growth(「Applied Physics Letters」内)
- http://scitation.aip.org/content/aip/journal/apl/106/22/10.1063/1.4922196
- [4]High efficiency heterojunction solar cells on n-type kerfless mono crystalline silicon wafers by epitaxial growth(「Renewable Energy Global Innovations」内)
- https://reginnovations.org/solar-cells/high-efficiency-heterojunction-solar-cells-on-n-type-kerfless-mono-crystalline-silicon-wafers-by-epitaxial-growth/
- [5]太陽電池のSiウエハーをCVDで作製、製造コストを半減へ(日経テクノロジーonline)
- http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/102000802/
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