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2017年06月22日

太陽光発電+水素利用の実証試験2件が東北地方で開始、浄水場(東北大学+仙台市水道局)と建物付帯型(清水建設+産総研)

今月(2017年6月)に入ってこれまでに

  • 太陽光発電水素利用を組み合わせた実証試験の開始
が2件、報道・発表されています[1][7]。

今回は他の情報元([2]〜[6])と合わせて、各試験の概要をまとめてみました。


<浄水場での実証試験>

実施者 東北大学、仙台市水道局
実施場所 仙台市内の「茂庭浄水場
目的 浄水場において
  • 通常時の再エネ電力の有効利用
  • 災害時などの非常用電源の確保
を実現する。
仕組み 太陽光発電設備(20kW、浄水場に既設)の余剰電力により、水を電気分解して水素を発生させ、タンク(30m3)等に貯める。
太陽光発電の出力不足時や、非常時に、この水素を用いて燃料電池で発電する。
(※短周期変動用の貯蔵装置(電気二重層キャパシタ)も用いる)
実施期間 20166月〜2019年度末
事業費 4億5000万

<建物付帯型システムの実証試験>

実施者 清水建設、産総研
実施場所 産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」(FREA)内
背景・目的 水素エネルギー利用システムは、余剰電力により水を電気分解して作った水素を貯蔵し、必要に応じて酸素と反応させ、電気と熱を取り出す。
清水建設と産総研の共同研究は2016年2月に開始しており、今回の実証システムは2017年4月に完成した。
両者は、この研究でコンパクトな建物付帯型システムを開発し、2020年までに建物・街区に導入することを目指している。
今回の実証試験では
  • システムの性能検証
  • 自社製スマートBEMSによる、最適な制御技術の確立
を目的としている。
設備・システム 延床1000m2程度の建物での利用に、特化した規模と構成としている。
  • 太陽光発電設備(20kW)
  • 水電解装置(5Nm3/h)
  • 水素貯蔵装置(約40Nm3、水素吸蔵合金を使用)
  • 燃料電池(3.5kW)
  • 蓄電池(10kW)
  • シミズ・スマートBEMS」:
    実際の建物での電力・熱需要データに基づき、太陽光発電の発電状況を勘案しつつ、水素の製造・貯蔵・放出等を監視・制御する。
実施期間 2016年6月〜2018年3月(約10ヶ月間)


両事業とも「太陽光発電+水素利用により、電力需給のマッチングを図る」という点は共通していますが、一方で電力の需要先は

  • 前者(東北大+仙台市水道局):特定の用途を持つ施設(浄水場)
  • 後者(清水建設+産総研):一般的な(汎用の)建物を想定した試験施設
と、明確な違いが感じられます。

具体的には、前者の電力需要は(施設の用途が特化されている故に)比較的予想しやすいと考えられるのに対し、後者は(実用時には)多様な建物利用者が想定されます。

そして実証試験用のシステムを見ると、後者で用いられるEMSは、前者には明記がありません。(※ただし太陽光発電設備の「電力入出力制御」は有る)

この点には、各々の需要先施設の、電力需要の特性の違いが表れているのでは、と推測します。


今回の2つの実証試験を含むNEDOの「水素社会構築技術開発事業」[4][5]は、最終的に2030年頃の「本格的な水素サプライチェーンの構築」を想定しているとのこと。

ちょうどその頃は、FIT(2011年度に開始)で初期に認定された産業用太陽光発電の買取期間切れ(20年)が目前であり、水素利用の本格的な実用化が実現していれば、まだ稼動できる太陽光発電設備の継続利用を、強力に後押しするインフラになり得ると考えます。

また、太陽光発電+水素利用の実用化に向けた取組みは、例えば

と、先述のNEDOの事業に入っていないものも有り、日本国内での研究開発の旺盛さ(そして実用化への期待の強さ)が伺えます。

これらの取組みが実を結び、日本における早期の実用化が実現することを、是非とも期待したいものです。


もう一点、今回の実証試験が両方とも、東北地方で実施されるのが、非常に興味深いです。

東日本大震災と福島第一原発事故を経験したことが、この地域において新しいエネルギー技術の研究・開発を積極的に進める、強い原動力となっているとすれば、将来的に水素利用の一大先進地となる可能性は、高いのかもしれません。


※参照資料:
[1]安定発電へ水素精製 浄水場で8月実証実験(河北新報、2017/6/20の記事)
http://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201706/20170620_13032.html
[2]東北大学・水素社会構築技術開発事業への協力について(仙台水道局)
https://www.suidou.city.sendai.jp/01_jigyou/11.html
[3]非常用電源機能を有する再生可能エネルギー出力変動補償用 電力・水素エネルギー貯蔵システムの研究開発
(東北大学、http://www.ecei.tohoku.ac.jp/hamajima/内)
http://www.ecei.tohoku.ac.jp/hamajima/study/NEDO20161121.pdf
[4]水素社会構築技術開発事業 実施方針:平成29年度版
(NEDO、http://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100096.html内)
http://www.nedo.go.jp/content/100863639.pdf
[5]平成28年度「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発」に係る実施体制の決定について 委託先一覧
(同上、http://www.nedo.go.jp/koubo/FF3_100144.html内)
http://www.nedo.go.jp/content/100798052.pdf
[6]清水建設と産総研、太陽光発電で水素を製造、スマートBEMSでの最適な制御を目指す(新電力ネット)
https://pps-net.org/column/39017
[7]建物付帯型の水素エネルギー利用システムが本格稼働(清水建設、2017/6/1の発表)
http://www.shimz.co.jp/news_release/2017/2017010.html
[8]福島再生可能エネルギー研究所
http://www.aist.go.jp/fukushima/

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posted by 管理人 at 06:00 | Comment(0) | 研究・開発の動向
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