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2017年06月29日

NEDOが太陽光発電のBOSコスト低減・システム効率向上のため、新たな研究開発テーマ4つを採択、住宅の建材一体型や非住宅の壁面設置など

NEDO2017年6月26日に、

  • 太陽光発電における
    • BOSコスト(太陽電池モジュール以外の初期コスト)の低減
    • システム効率向上(発電量を増加させる)
    を目的とした、計4テーマの研究開発を実施する。
と発表していました[1]。

概要は次の通り。


<背景>

  • 太陽光発電のコストの更なる低減が求められている中で、経産省の「調達価格等算定委員会」は
    • 2019年度(平成31年度)の10kW未満(住宅用):
      ・調達価格の目標:24円/kWh
      ・上記の実現に必要なシステム価格の想定値30.8万円/kW(2016年12月に提示)
    等の目標数値を示している。
  • NEDOは、5年計画(2014〜2018年)で「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト」を進めている。
    その中で、上記の目標値を追加した公募を行った結果、今回の4テーマを採択した。

<研究開発のテーマ・内容など>

実施期間は2年。

  • BOSコストの低減
    下記のシステム価格を実現する技術を開発する。
    • 住宅用(10kW未満):2019年に30.8万円/kW以下
    • 非住宅用(10kW以上):2020年に20.0万円/kW以下
    テーマ内容委託先
    長寿命モジュール対応の低コスト太陽光発電システムの開発、実証 住宅屋根設置用の建材一体型を志向した、長寿命モジュールを開発する。
    そしてこのモジュール向けに、低コストの架台施工技術を開発する。
    三洋電機
    新建材一体型モジュール+高耐久化によるBOSコストの削減 記載無し カネカ社

  • システム効率の向上(発電量の増加)
    現状のBOSコストで、システム全体の発電量10%以上アップする技術を開発する。
    テーマ内容委託先
    内部反射型効率向上・規格化壁面設置太陽光発電システムの開発 壁面設置型垂直設置、両面発電)のモジュール向けに
    • 太陽光の効果的な入射
    • 建築物の内外壁面への、低コストでの設置
    を可能にする工法を開発する。
    カネカ社
    多雪地域用非常電源機能付き太陽光発電システムの高効率化・低コスト化 記載無し 「公害技術センター」社


「三洋電機」の名前にはちょっと驚きましたが、検索してみたところ、金属のプレス加工などを手がけている同名の企業様[3]がありました。

そのため流石に委託先は、パナソニックに吸収された(HIT型太陽電池を手がけていた)三洋電機のほうではないと思われます。

もっとも[3]の企業様は、主事業が自動車向け部品の製作などであり、今回の委託先かどうかは確認していません。

しかし保有技術の点では、太陽電池モジュール用架台の開発・製造とも、適合するように見受けられます。


また「公害技術センター」様のサイト[4]もありましたが、同社が今回の委託先企業と同じかどうかは、やはり未確認です。

ただ[4]の企業の本社・支店は、降雪地域である長野県内であり、また環境関連の事業を手がけておられることから、こちらも「多雪地域用」太陽光発電というテーマとは、合っているように感じます。


それはひとまず置いて、「BOSコスト低減」のシステム価格の目標値と、昨年度・今年度のシステム価格(調達価格等算定委員会の発表資料[2]内)を照らし合わせると

住宅用
(10kW未満)
非住宅用
(10kW以上)
2016年度35.3万円/kW25.1万円/kW
2017年度33.6万円/kW24.4万円/kW
2019年度
の目標値
30.8万円/kW
以下
2020年度
の目標値
20.0万円/kW
以下
となります。

住宅用は(2016年度・2017年度比で)約3万〜4万円/kWのダウン、非住宅は4〜5万円のダウンであり、これはかなり大きな引き下げ目標という印象です。

しかし今回の研究テーマは、

  • 建材一体型の住宅屋根設置
  • 非住宅の壁面・垂直設置
  • 多雪地域向けの非常電源付き
と、適用範囲がかなり限られており、これで上記のコスト引き下げ幅を実現できるものなのか、個人的には疑問を抱きます。


また今回は、(個人的に最も関心がある)既築住宅への導入コスト引き下げの取組みが、全く入っていないのは残念でした。

もっともNEDOは以前から、太陽光発電の進歩に向けた取組みを幅広く手がけており(関連記事)、今回の新テーマもあくまでその大きな流れの一部、ということだとは思われます。


※参照資料:
[1]太陽光発電コストのさらなる削減を目指す研究開発4テーマを新たに開始(NEDO、2017/6/26発表)
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100785.html
[2]調達価格等算定委員会(第28回)‐配布資料(経産省、2016年12月13日更新)
http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/028_haifu.html
[3]技術と製品(三洋電機)
http://www.sanyo-dss.co.jp/page4.html
[4]株式会社公害技術センター
http://www.kotec.jp/index.html

※関連記事:

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2017年06月22日

太陽光発電+水素利用の実証試験2件が東北地方で開始、浄水場(東北大学+仙台市水道局)と建物付帯型(清水建設+産総研)

今月(2017年6月)に入ってこれまでに

  • 太陽光発電水素利用を組み合わせた実証試験の開始
が2件、報道・発表されています[1][7]。

今回は他の情報元([2]〜[6])と合わせて、各試験の概要をまとめてみました。


<浄水場での実証試験>

実施者 東北大学、仙台市水道局
実施場所 仙台市内の「茂庭浄水場
目的 浄水場において
  • 通常時の再エネ電力の有効利用
  • 災害時などの非常用電源の確保
を実現する。
仕組み 太陽光発電設備(20kW、浄水場に既設)の余剰電力により、水を電気分解して水素を発生させ、タンク(30m3)等に貯める。
太陽光発電の出力不足時や、非常時に、この水素を用いて燃料電池で発電する。
(※短周期変動用の貯蔵装置(電気二重層キャパシタ)も用いる)
実施期間 20166月〜2019年度末
事業費 4億5000万

<建物付帯型システムの実証試験>

実施者 清水建設、産総研
実施場所 産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」(FREA)内
背景・目的 水素エネルギー利用システムは、余剰電力により水を電気分解して作った水素を貯蔵し、必要に応じて酸素と反応させ、電気と熱を取り出す。
清水建設と産総研の共同研究は2016年2月に開始しており、今回の実証システムは2017年4月に完成した。
両者は、この研究でコンパクトな建物付帯型システムを開発し、2020年までに建物・街区に導入することを目指している。
今回の実証試験では
  • システムの性能検証
  • 自社製スマートBEMSによる、最適な制御技術の確立
を目的としている。
設備・システム 延床1000m2程度の建物での利用に、特化した規模と構成としている。
  • 太陽光発電設備(20kW)
  • 水電解装置(5Nm3/h)
  • 水素貯蔵装置(約40Nm3、水素吸蔵合金を使用)
  • 燃料電池(3.5kW)
  • 蓄電池(10kW)
  • シミズ・スマートBEMS」:
    実際の建物での電力・熱需要データに基づき、太陽光発電の発電状況を勘案しつつ、水素の製造・貯蔵・放出等を監視・制御する。
実施期間 2016年6月〜2018年3月(約10ヶ月間)


両事業とも「太陽光発電+水素利用により、電力需給のマッチングを図る」という点は共通していますが、一方で電力の需要先は

  • 前者(東北大+仙台市水道局):特定の用途を持つ施設(浄水場)
  • 後者(清水建設+産総研):一般的な(汎用の)建物を想定した試験施設
と、明確な違いが感じられます。

具体的には、前者の電力需要は(施設の用途が特化されている故に)比較的予想しやすいと考えられるのに対し、後者は(実用時には)多様な建物利用者が想定されます。

そして実証試験用のシステムを見ると、後者で用いられるEMSは、前者には明記がありません。(※ただし太陽光発電設備の「電力入出力制御」は有る)

この点には、各々の需要先施設の、電力需要の特性の違いが表れているのでは、と推測します。


今回の2つの実証試験を含むNEDOの「水素社会構築技術開発事業」[4][5]は、最終的に2030年頃の「本格的な水素サプライチェーンの構築」を想定しているとのこと。

ちょうどその頃は、FIT(2011年度に開始)で初期に認定された産業用太陽光発電の買取期間切れ(20年)が目前であり、水素利用の本格的な実用化が実現していれば、まだ稼動できる太陽光発電設備の継続利用を、強力に後押しするインフラになり得ると考えます。

また、太陽光発電+水素利用の実用化に向けた取組みは、例えば

と、先述のNEDOの事業に入っていないものも有り、日本国内での研究開発の旺盛さ(そして実用化への期待の強さ)が伺えます。

これらの取組みが実を結び、日本における早期の実用化が実現することを、是非とも期待したいものです。


もう一点、今回の実証試験が両方とも、東北地方で実施されるのが、非常に興味深いです。

東日本大震災と福島第一原発事故を経験したことが、この地域において新しいエネルギー技術の研究・開発を積極的に進める、強い原動力となっているとすれば、将来的に水素利用の一大先進地となる可能性は、高いのかもしれません。


※参照資料:
[1]安定発電へ水素精製 浄水場で8月実証実験(河北新報、2017/6/20の記事)
http://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201706/20170620_13032.html
[2]東北大学・水素社会構築技術開発事業への協力について(仙台水道局)
https://www.suidou.city.sendai.jp/01_jigyou/11.html
[3]非常用電源機能を有する再生可能エネルギー出力変動補償用 電力・水素エネルギー貯蔵システムの研究開発
(東北大学、http://www.ecei.tohoku.ac.jp/hamajima/内)
http://www.ecei.tohoku.ac.jp/hamajima/study/NEDO20161121.pdf
[4]水素社会構築技術開発事業 実施方針:平成29年度版
(NEDO、http://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100096.html内)
http://www.nedo.go.jp/content/100863639.pdf
[5]平成28年度「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発」に係る実施体制の決定について 委託先一覧
(同上、http://www.nedo.go.jp/koubo/FF3_100144.html内)
http://www.nedo.go.jp/content/100798052.pdf
[6]清水建設と産総研、太陽光発電で水素を製造、スマートBEMSでの最適な制御を目指す(新電力ネット)
https://pps-net.org/column/39017
[7]建物付帯型の水素エネルギー利用システムが本格稼働(清水建設、2017/6/1の発表)
http://www.shimz.co.jp/news_release/2017/2017010.html
[8]福島再生可能エネルギー研究所
http://www.aist.go.jp/fukushima/

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2016年11月28日

NEDOと日清紡メカトロニクスが「熱電ハイブリッド太陽電池モジュール」を開発、発電効率+集熱効率は78%

NEDO日清紡メカトロニクス社が2016年11月24日に、

  • 発電効率+集熱効率が高い熱電ハイブリッド太陽電池モジュールを開発し、静岡県内で実証試験を開始した。
と発表していました[1]。

概要は次の通り。


ハイブリッドモジュール

構造
  • 太陽電池パネル
    シリコン単結晶型(セル36枚)で両面ガラス構造、出力160W。
  • 集熱部
    上記パネルの裏面に、「特殊カーボンブラック添加エラストマー材料」で包み込んだ架橋ポリエチレン管(40m)を配置している。
    このエラストマー材料は、「オレフィンゴム」(自動車の外装部品などに用いられている)に、特殊な微細カーボン粉を添加しており、波長変換機能を持つ。
    これにより太陽光の赤外線を、水に吸収されやすい遠赤外線に変換する。
エネルギーの利用効率 太陽光発電と太陽熱利用の合計78.0%。
  • 太陽電池の変換効率15.5
  • 太陽熱の集熱効率62.5
    (※市販の温水器の集熱効率は、約40〜50%)

実証実験

目的 発電・集熱システムとしての、発電効率・集熱効率・信頼性を検証する。
実施場所 静岡県掛川市の「大東温泉シートピア
モジュールの設置枚数 140
温水の供給ライン
  • 水道水を既設温水設備に供給するライン:
    モジュール112枚に通水し、昇温する。
  • 温泉水を足湯施設に供給するライン:
    モジュール28枚に通水して、セ氏40度以上に上げる。
実施期間 2017年2月まで

太陽熱利用と太陽電池モジュールを一体化する試みは、これまで私が知る限りでも国内外で多くの事例がありました。(※関連記事参照)

にも関わらず、本格的な実用化に至ったケースはまだ見聞きしていませんが、一見良いアイディアに見えても、モジュール重量や設備の構造などの点で、実用化・製品化のハードルが想像以上に高い、ということかもしれません。

その中で今回の開発品については、まず集熱効率の高さが際立っており、合計で8割弱という(太陽電池モジュール単体では現状不可能な)エネルギー利用効率には、強いインパクトがあります。

そして実証試験の場所は、湯を日常的に使う「温泉施設」[3][4]であり、更に(屋根・屋上設置ではなく)地上設置であることから、現実的な用途を志向していることも感じられます。

そのぶん、用途(導入場所)がかなり限定されることも考えられますが、まずは今回の実証試験による検証で、実用化への道筋が見えることを、期待したいものです。


※参照資料:
[1]高効率熱電ハイブリッド太陽電池モジュールの実証試験を開始(NEDO)
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100676.html
[2]弊社は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究で、発電と温水が作れるハイブリッド太陽電池モジュールを開発し、静岡県掛川市の大東温泉シートピアにて実証試験を開始しました。(日清紡メカトロニクス社)
https://www.nisshinbo-mechatronics.co.jp/news/pdf/1503_1_ja.pdf
[3]大東温泉シートピア(掛川市)
http://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/kankou/spot/onsen/seatopia.html
[4]大東温泉シートピア
http://seatopia.info/

※関連記事:

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2016年04月12日

東北電力が「水素製造技術」の実証事業を予定、太陽光発電の出力変動調整に用いる

東北電力2016年3月31日に、

  • 再エネの更なる導入促進に向けて、水素製造に関する研究に取り組む。
との方針を発表していました[1]。

概要は下記の通り。


背景

  • 再エネ(太陽光発電など)の導入においては、
    • 短周期面数十分未満)の出力変動(周波数変動が発生する)
    • 長周期面(数十分以上)の出力変動(余剰電力が発生する)
    調整が課題となっている。
  • 上記の課題について東北電力では現在、
    • 南相馬変電所(※周波数変動対策)
    • 西仙台変電所(※余剰電力対策)
    に各々蓄電池を設置しており、出力変動対策の実証事業に取り組んでいる。

実証事業

  • 目的
    変動の大きい太陽光発電の電力により、水素を製造することで、水素製造が(蓄電池と同様に)出力変動対策として適用できるか否かを検証する。
  • 内容
    太陽光発電による発電電力を用い、水素を製造・貯蔵する。
    この水素を燃料電池に用いて、自社「研究開発センター」(仙台市)の使用電力を発電する。
  • 使用設備
    下記の設備を研究開発センターに設置する。
    (太陽光発電以外は、地上にコンテナ設置)
    • 太陽光発電設備(屋上設置、約50kW)
    • 蓄電池(約60kWh)
    • 水素製造装置(約5Nm3/h)
    • 水素貯蔵タンク(水素吸蔵合金方式・約200Nm3、放電出力は約300kWh相当)
    • 燃料電池(10kW未満)
  • 実施期間2017年3月〜2019年3月
    ※2016年4月から、実験設備の設計・施工・設置を開始する。

ちょうど1ヶ月前には、トクヤマ社が高効率な水素製造技術の開発に向けた実証事業を発表しており、それに続いての今回の発表となったことは、単なる偶然とは思えません。

これは、最近の数年間における太陽光発電の急激な導入量増加が、出力変動への対応に対するニーズを急速に高めている、ということなのかもしれません。

トクヤマ社と今回の東北電力のいずれも、まだ「実証事業」の段階であり、実用化にはまだまだ時間が必要と思われますが、遠くない将来に、コスト面・機能面・安全面で実用可能な水準に到達することを、強く期待したいものです。


※参照資料:
[1]水素製造技術を活用した再生可能エネルギーの出力変動対策に関する研究について(東北電力)
http://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/1191500_1049.html
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2016年03月28日

トクヤマが太陽光発電電力による水素の製造・貯蔵システムを開発中、実証試験の第一段階

トクヤマ社が2016年3月8日に、新エネルギーに関する実証試験2つを開始していることを、発表していました[1]。

そのうちの1つは太陽光発電の電力を利用するもので、概要は次の通り。


  • 事業名
    「太陽光発電を利用したアルカリ水溶液の電気分解による高効率水素製造 システムの開発及び貯蔵・利用システムの検討」
  • 目的
    • 塩水の電気分解による苛性ソーダの製造技術(トクヤマ社が保有)
    • 太陽光発電の出力変動を制御するシテスム(長州産業製)
    を組み合わせて、効率の良い水素製造シテスムの開発を目指す。
    (このシステムは、再エネ等の余剰電力を水素に変換して貯蔵することを可能にする)
    今回の実証事業は、その第一段階である。
  • 実施場所:周南市の「徳山製造所」内
  • 事業期間:2015〜2017
  • その他:山口県による平成27年度「やまぐち産業戦略研究開発等補助金」の一つに採択されている。

電力の貯蔵手段としての水素製造は、随分前から注目されてはいますが、本格的な実用化はいまだ実現せず。

今回のトクヤマ社による実証試験も、まだ「第一段階」とのことであり、実用化の遠さを感じてしまいます。

とはいえ、もし安全で高効率な水素製造システムを実現できれば、発電できる時間が限られている太陽光発電の実用性能アップにもつながることから、トクヤマ社の取組みには強く期待したいところです。

またトクヤマ社は、太陽電池向けシリコンの製造を手がけていることから、この研究開発の取組みが実を結べば、巡り巡ってシリコン需要の拡大にもつながっていくのではないでしょうか。


※参照資料:
[1]やまぐち産業戦略研究開発等補助金事業の実証試験開始について 報道公開のお知らせ(トクヤマ)
http://www.tokuyama.co.jp/news/release/2016/20160308.html
[2]平成27年度やまぐち産業戦略研究開発等補助金の採択を決定しました。(山口県)
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a16900/cluster/201404160001.html
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2015年11月24日

北海道大学が「カメレオン発光体」により、結晶シリコン型太陽電池の変換効率を2%アップ

2ヶ月近く前になりますが、北海道大学2015年10月8日

  • 温度変化により発光色が変わる「カメレオン発光体」を応用することで、結晶シリコン型太陽電池の変換効率2%アップすることに成功した。
と発表していました[1]。

まず「カメレオン発光体」の概要を、[2]から抜き出してみました。


  • 発表時期2013年5月
  • 想定用途
    元々は
    • 超音速旅客機
    • 大気圏突入型の宇宙船
    の開発における利用が想定されていた。
    (風洞実験における機体表面の温度計測用)
  • 特徴
    希土類により構成されるポリマー分子であり、次の特徴・利点を持つ。
    • 計測温度の幅広さ
      発光色(※照射される紫外光を変換)は、温度変化に伴い
      ・低温域(セ氏-80度):緑色
      ・中温域:レモン色〜黄色〜オレンジ色
      ・高温域(セ氏200度):赤色
      と変化する。
      これにより従来の塗料と比べて、温度計測の
      ・範囲(セ氏-80度〜220度を計測可能)
      ・精密さ
      を向上できる。
    • 高い耐久性
      特殊構造により、セ氏300度にも耐え得る。
      (高温でも分解しない)
    • 発光効率が高い。

そして、太陽電池パネルへの応用については下記の通り。


  • 適用方法
    「カメレオン発光体」の誘導体を、結晶シリコン型太陽電池パネル内のEVAフィルムに入れた。
  • 作用と効果
    「カメレオン発光体」が、照射光の中の紫外光を吸収して、赤外領域に発光する。
    これにより太陽電池の光吸収領域が増え、変換効率が2%アップする。
  • 耐久性:耐久性試験では、10年間持つとの結果が得られている。

[2]を読む限り、太陽電池への応用に関しては正直、曖昧な部分が目立ちますが、興味深い成果であることも確かです。

個人的にはまず、次の3点が気になるところです。

  • 機能維持の寿命:
    国内大手メーカーがいずれも10年以上の保証を用意している[3]〜[6]現状では、耐久性試験による「10年」という結果は不十分と考えます。
  • PID現象への影響:
    封止材にこれまでに無い物質(カメレオン発光体)を導入することで、PID現象が発生しやすくなる、ということは無いのか。
  • 費用対効果:
    「カメレオン発光体」の価格によっては、発電量の増加による収益増加分を、導入によるコスト増が上回る可能性があるのではないでしょうか。

とはいえ、アップ幅の「2%」がモジュール変換効率(%)のポイント数とすれば、元の変換効率が20%の場合、「カメレオン発光体」の導入後は22%。
発電量が単純に1割増えることになり、これま決して無視できない効果だと考えます。

商業段階への導入を実現するにしても、相応の時間が必要になるでしょうが、結晶シリコン型の発電性能アップの可能性の一つとして、北海道発のこの技術が花開くことになれば・・・とも思います。


※参照資料:
[1]カメレオン発光体を太陽電池へ応用−シリコンの交換効率2%アップ!(北海道大学)
http://www.hokudai.ac.jp/news/151008_eng_pr.pdf
[2]【記者会見】"温度変化を感知"カメレオン発光体 ―新時代の宇宙船開発に貢献―(同上)
http://www.hokudai.ac.jp/news/2013/05/post-244.html
[3]住宅用太陽光発電システム サービス品質(京セラ)
http://www.kyocera.co.jp/solar/pvh/features/4quality/service.html
[4]長期保証の安心感(パナソニック)
https://sumai.panasonic.jp/solar/guarantee.html
[5]20年・15年パワフル保証(有償)(東芝)
https://www.toshiba.co.jp/sis/h-solar/powerful/support/long/index_j.htm
[6]まるごと15年保証(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/sunvista/step2/15years/
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2014年11月18日

スイスCEMSが太陽電池パネルのカラー選択・セル不可視化技術を開発、可視光の選択反射と赤外光の発電利用を組み合わせ

csem-white-pv-s11.jpg

スイスの「Centre Suisse d'Electronique et Microtechnique SACEMS)」が2014年10月28日に、

  • 主にBIPV向けとして、太陽電池パネルで多様な色を実現し、内部のセルを見えなくできる技術を開発した。
と発表していました[1][2]。

技術の概要は下記の通り。

開発の背景

  • 殆どの太陽電池モジュールでは、太陽光の吸収量を最大化することを最優先しているが、一方では内部のセルと配線が丸見えになり、美観に劣る点が、建物への太陽光発電の統合が進まない要因となっている。
    この解決策として、モジュール表面を白くすることが模索されてきたが、それでは太陽光の大部分を反射することになるため、実現は不可能と考えられてきた。

特徴

  • 可視光を反射し、赤外光で発電
    赤外光を電力に変換できるセル技術
    ・可視光線のスペクトルを選択し散乱させるフィルター
    を組み合わせた新技術を開発。
    これにより内部セルが見えなくなり、またモジュール表面の色も任意に選択できる。
  • 既存のモジュールや生産工程に適用可能
    結晶シリコン型をベースにした太陽光発電技術なら、どれでもすぐ生産工程に導入可能。
    また、既存モジュールのトップにも適用できる。
  • モジュールの形状を選ばない
    平面・曲面いずれのモジュールにも適用できる。
    このため建物だけでなく、
    ・コンシューマーエレクトロニクス(ノートパソコン等)
    ・自動車産業
    等での需要も期待される。
  • モジュールの温度上昇を抑制
    モジュール表面を白くした場合、可視光が反射されることで熱に変化しないため、モジュール温度は通常モジュールより20〜30度ほど低くなることが見込まれる。
CSEMの新技術01

他の色ならともかく白い太陽電池モジュールとなると、果たして発電の用をなせるのかが疑問ですが、太陽光の組成では可視光線が約47%、赤外線が約46%[3]。

そのため、もし赤外線を十分に発電に利用できるのであれば、可視光を殆ど反射しても十分な(既存モジュールと同等の)発電量が得られるとは思われますが、今回の新技術の現状で、実際どの程度の発電能力が得られるのかは、非常に気になるところです。

ただモジュールの意匠性が劇的に増すことで、建物外壁などへの導入が加速することになれば、多少変換効率で劣るとしても、太陽光発電の導入量(発電量)拡大には大きく寄与できるとも考えられます。

また、最も実績・信頼性のある結晶シリコン型にそのまま適用できることも大きな利点であり、太陽光発電の導入可能性を拡大しうる技術として、早期の実用化を期待したいところです。


※参照・参考資料:
[1]White solar modules: a revolution for building integration(CSEM)
http://www.csem.ch/site/card.asp?pId=28474#.VGn6HWcpwxg
[2]同上
http://www.csem.ch/site/card.asp?shownav=no&pid=28469#.VGn6R2cpwxg
[3]太陽放射の組成(ウィキペディア「太陽放射」内)
posted by 管理人 at 01:46 | Comment(0) | 研究・開発の動向

2014年07月09日

NEDOが太陽光発電の3プロジェクトを決定、BOSコスト削減や導入場所拡大、リサイクル技術開発などを推進

NEDO2014年7月8日に、

  • 太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト
  • 太陽光発電多用途化実証プロジェクト
  • 太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト
におけるテーマと採択先(公募で募集)を決定したことを、発表していました[1]〜[5]。

この3プロジェクトは、社会への太陽光発電の大量導入を見据えて推進されるもので、各プロジェクトの方針と主な内容は下記の通り。

太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト

  • 方針:
    システム効率10%アップ
    BOS(基礎・架台・施工など)コストの10%削減
    維持管理費30%削減
    を実現するための技術の、開発・実証を行う。
  • 主な内容:
    ・次世代の長寿命・高効率なパワーコンディショナ、ACモジュール
    ・低価格な角度可変式架台(積雪時の発電効率アップ)
    太陽光反射布による、ソーラーシェアリング設備のシステム効率向上
    新規不具合検出機能を備える、発電量/設備健全性モニタリングシステム
    ・HEMSによる、発電電力量の遠隔自動診断故障部位把握方法

太陽光発電多用途化実証プロジェクト

  • 方針:
    ・太陽光発電の適地が減少している中で、導入ポテンシャルが大きいた導入が進んでいない
     ・建物壁面
     ・農業関係
     ・傾斜地
     ・水上
     の4分野において、発電コストを低減する技術の開発・実証、導入可能性調査を行う。
    ・発電以外の機能・用途を付加する技術(高付加価値化技術)の開発・実証などを行う。
  • 主な内容:
    ・米と発電の二毛作
    ・熱電ハイブリッド集光システム
    ・太陽熱・光ハイブリッド太陽電池モジュール
    ・採光型太陽光発電ユニット
    ・E-SEG(緊急時自発光誘導デバイス)
    ・グリーン晴耕雨読型分散サーバー
    ・集光型太陽光発電/太陽熱温度成層型貯湯槽のコジェネシステム

太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト

  • 方針:
    使用済み機器の大量発生に備え、リサイクル処理が難しい太陽電池モジュールについて
    低コストなリサイクル処理技術
    ・売買可能な有価物を回収するための高純度化技術
    を開発する。
  • 主な内容:
    ・リサイクルを安定実施するための課題調査
    ・リサイクルの動向や評価手法に関する調査・検討
    ・廃棄モジュールの効率的な回収システムや分別に関する調査・検討
    ・結晶シリコンモジュールのリサイクル技術(ウェット法など)
    可溶化法による、使用済みモジュールからの資源回収技術

FITにより太陽光発電の国内導入量が急激に拡大している中で、今回の3プロジェクトはいずれも、正面から取り組まなければならない、非常に重要な課題を示しているものだと感じられます。

電子機器であるパワコンで発生するトラブルの多さは、太陽光発電システムの長期安定稼動における大きな課題の一つだと思いますが、今回次世代パワコンの開発に取り組むPVTEC(太陽光発電技術協同組合)には、素材メーカーなど多様な企業が加盟している[6]ので、上手く連係がなされて有効な技術革新(大幅な長寿命化)が実現することを、強く期待したいです。

「多用途化実証プロジェクト」では導入可能性として4分野(建物壁面、農業、傾斜地、水上)が挙げられているものの、研究テーマでは農業以外が見当たりませんが、これについては昨年11月に発表したプロジェクトのほうで重点的に取り組む、ということかもしれません。

一方、付加価値技術については、今回の発表だけでは具体的内容が判らないものもあるので、今後の情報公開を待ちたいところです。

モジュールのリサイクルについては、やはり取り組みが先行している欧州についての調査が、特に重要になると考えます。

ただ同地での再処理方法は、現状では(アルミフレーム・端子ボックスを外した後に)粉砕しての分別が主流のようで[7]、その点で今回のプロジェクトで挙げられている技術(加熱カッターによるガラスとEVAの分離や、溶解による回収)は、実用化が実現できれば、日本発の先進技術になりうるものと考えます。


※参照・参考サイト:
[1]太陽光発電の大量導入社会を支える3プロジェクトを開始(NEDO)
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100284.html
[2]ニュースリリース内容の一部修正について(同上)
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100285.html
[3]平成26年度「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト」に係る実施体制の決定について(同上)
http://www.nedo.go.jp/koubo/FF3_100101.html
[4]平成26年度「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」に係る実施体制の決定について(同上)
http://www.nedo.go.jp/koubo/FF3_100102.html
[5]平成26年度「太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト」に係る実施体制の決定について(同上)
http://www.nedo.go.jp/koubo/FF3_100103.html
[6]PVTEC
http://www.pvtec.or.jp/
[7]PVeye誌 2014年6月号38-39p「800万tの廃棄モジュール その回収と再利用の実態」

※関連記事:
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2013年11月21日

NEDOが「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」の研究テーマ等を発表、ビル壁面・農地・傾斜地・水上・鉄道路線・河川敷・集合住宅ベランダへの導入技術を研究

NEDO2013年11月18日に、「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」の研究テーマと共同研究先(14法人)を発表していました[1]。

このプロジェクトは、太陽光発電の導入ポテンシャルが大きいものの実際の導入が進んでいない分野について、阻害要因の解消を目指すもので、具体的な分野と研究内容(事業者)は下記の通り。

  • ビルの壁面:低反射防眩型太陽電池モジュールと設置技術(カネカ社)
  • 農地・ビニールハウス:空気圧駆動式で強風を自動で受け流せる、低コストな太陽光追尾装置(ダイキン工業)
  • 畜舎の屋根:強度が弱い屋根に加工無しで取付できる架台と、軽量な太陽電池モジュール(オルテナジー社、旭硝子)
  • ビニールハウス:ビニールの撤去・被覆作業時に移設が不要で、風雨に強く高効率な太陽電池の設置方法(ユニバーサリー電工)
  • 営農型発電設備:発電量アップと低コスト化を実現できる、2軸追尾方式のシステム(伊藤電工)
  • 多様な形状の傾斜地
    ・軽作業(重機不要)で設置できる基礎架台技術や、太陽電池を自動取り付けできる施工装置(NTTファシリティーズ、アドテック富士)
    ・ユニット化した架台(半完成品状態で工場出荷)を用いる施工技術(奥地建産)
  • 水上淡水):
    ・耐候性の高い浮体一体型太陽電池モジュール化技術
    ・メンテナンス性(運搬・設置・撤去など)を考慮した構造設計技術
    など。(コアテック社)
  • 水上海水):
    ・耐塩水に優れる太陽電池モジュール技術
    ・電力安定化のためのシステム設計技術
    など。(シリコンプラス社)
  • 鉄道路線:鉄道線路内に太陽電池パネルを配置する発電システムの検討(フルーク社)
  • 河川敷:足場の悪い湿地での施工技術の検討・課題抽出など(A-スタイル社)
  • 集合住宅のベランダ:集合住宅の住民向けのシステム検討(発電電力の利用形態、系統連系時の課題などの調査)(みんな電力)

また研究期間2013〜2015年度、総事業費は約22.5億円(NEDOの負担率は2/3)とのことです。


一つ一つの分野自体は、従来から研究や実践がなされているとは思いますが、一括して提示されると、バリエーション(設置可能性)の豊かさ・多様さが改めて感じられます。

今後は中小規模の発電設備の増加が見込まれることを考えると、今回のプロジェクトで扱われるテーマ・技術はいずれも重要になると思われるだけに、2年間の研究でどのような成果が得られるのか非常に楽しみです。

ただ現時点では、各事業者のウェブサイトでも関連技術の情報は著しく少ないので、研究の開始・進展に伴う今後の情報公開(PR)も、十分に行ってほしいものです。


※参照・参考サイト:
[1]未導入分野における太陽光発電システムの実証プロジェクトを開始(NEDO)
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100235.html

※関連記事:
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2013年07月23日

有害・希少元素を含まない半導体ナノ結晶でサイズ・構造の制御に成功、塗布で作った薄膜での光電流発生も確認

科学技術振興機構(JST)が2013年7月23日に、

  • オーストラリア・ロイヤルメルボルン工科大学の日本人研究者らが、低コストでかつ毒性が少ない半導体ナノ結晶の開発に成功。
    また、塗布で作った薄膜への光照射による電流発生を確認した。
と発表していました[1]。

研究の概要は下記の通り。

  • 背景
    コロイド状半導体ナノ結晶は、塗布型印刷プロセスによる太陽電池製造に利用できるため注目されている。
     しかし、これまで作られた同結晶の主な種類は、毒性の高い元素(カドミウム、鉛など)を含むものに限られていた。
    ・EUが2006年に発布した「RoHS指令」では、鉛、水銀、カドミウムなどの毒性物質の使用が禁止されている。
     また、同様の規制は他の国にも広がっている。
     このため、より毒性が低く、かつ希少・高価な元素(インジウム等)を使用しない半導体ナノ結晶の開発が待たれている。
  • 成果
    ・安価な素材である銅・アンチモン・硫黄を含む、
     ・安四面銅鉱(Cu12Sb4S13
     ・ファマチナ鉱(Cu3SbS4
     の2種類の半導体ナノ結晶について、合成時に
     ・サイズの制御
     ・構造の制御
     が可能であることが判明した。
    ・上記のナノ結晶コロイドを用いて、塗布法により薄膜を簡単に作製できることを確認。
     またその薄膜に光を当てることで、安定的に光電流が生じることも判明した。
  • 太陽電池分野での今後の展開
    溶液塗布プロセスにより実際に太陽電池を作製し、光吸収材や電荷輸送層としての有効性を検討。
    安価な太陽電池の作製を目指す。

安価で毒性の少ない素材を用い、また薄膜の作成も簡単なプロセス(塗布)で行えるだけに、実用化された場合にもたらされるメリットは非常に大きいのでは、と考えます。

勿論、現在はまだまだ基礎的な研究の段階とは思いますが、今回の研究成果が将来的に、化合物型の太陽電池に新たな革新をもたらすものになることを、密かに期待したいと思います。


※参照・参考サイト:
[1]太陽電池に適した低コストで毒性が少ない半導体ナノ結晶の合成に成功(JST)
http://www.jst.go.jp/pr/info/info973/
posted by 管理人 at 20:37 | Comment(0) | 研究・開発の動向