- 山形県の大石田町で100MWの太陽光発電所が計画、積雪対策を複数講じる予定(2017/07/18)
- Trina Solar社が「Fortune Solar Holdings」による子会社化で株式非公開に、今後は更に投資家コンソーシアムが買収する予定(2017/04/27)
- 北九州の「新菱」社が、九州・山口で太陽電池モジュールリサイクルのモデル事業を実施中、回収ボックスを各地に設置(2017/03/27)
- アスクルの倉庫火災の長期化は屋上の太陽電池モジュールが一因、感電の危険性で放水の妨げに(2017/02/27)
- ネクストエナジー社が産業設備向けのモジュール洗浄サービスを開始予定、自走式洗浄機「PV Cleaner」で洗浄時間を1/3に短縮(2017/02/20)
- SolarWorld社がPERC単結晶型への注力・ドイツ国内の生産体制集約を決定、中国製モジュールの大量流入による価格急落に対処(2017/02/20)
- タイ国「デルタエレクトロニクス」の工場が太陽光発電設備(計510kW)を導入、CIS薄膜モジュールとデルタ電子製のコンパクトなパワコンを用い、発電量は全量を自家消費する予定(2016/12/12)
- NEC等が太陽光発電の出力制御技術を開発、「信頼度つき発電量予測」や抑制量の最適配分・一括制御が可能(2015/08/27)
- ひたちなか市内の太陽光発電施設の建設現場で、太陽電池パネル138枚などが盗難(2013/03/09)
- 米倉山太陽光発電所で、超伝導を用いる次世代型フライホイール蓄電装置の実証実験が行われる予定(2012/08/15)
2017年07月18日
山形県の大石田町で100MWの太陽光発電所が計画、積雪対策を複数講じる予定
2017年7月13日の「河北新報」の記事[1]で、
- 山形県の大石田町内で、100MWの太陽光発電所の建設が計画されている。
この記事の中から、発電所に関する主なデータ等を抜き出してみました。
建設場所 | 大石田町西部の次年子地区 |
敷地面積 | 計約485ha(うち400haは取得済み) |
発電容量 | 100MW
※太陽電池モジュールは、上記敷地のうち約3割に設置する。 |
発電電力量 | 10万kWh/年の見込み。(全量を東北電力に売電) |
開発 |
|
スケジュール予定 |
|
その他 | 積雪対策は
これらについては、次の冬から実証実験を行う予定。 |
485haという敷地面積の規模に驚きますが、個人的には静岡県・伊東市でのケース(市議会がメガソーラー計画(約50ha)への「断固反対」を決議)が記憶に新しいので、今回のプロジェクトに対して地元説明会で反対意見が特に出なかったというのは、非常に意外に感じました。
開発予定地の状況は判りませんが、(山林の大規模な伐採などが必要ない)あらかじめある程度開けた土地、ということなのかもしれません。
太陽電池モジュールの設置が、敷地面積の3割程度というのは、私(北海道在住)が普段目にしている野立ての太陽光発電所と比べると、かなり少ない印象です。
また1MWあたりの敷地面積を計算しても、約485[ha]/100[MW]=約4.85ha/MWであり、当ブログでこれまでチェックしてきた発電事業(1MWあたり1ha台の後半〜3ha)と比べて、やはり明らかに面積が大きいです。
建設予定の地域は、積雪が3mにも達するとのことなので
- 雪の置き場の確保
- 架台間の十分な間隔の確保(他モジュールへの日影の防止、除雪作業スペースの確保など)
Sonnedix社は東北地方で、他にも数十MW規模のプロジェクトを複数開発中[2]であるものの、稼動済みの設備はまだ無い模様[3]。
今回の大石田町で採用する積雪対策が有効であれば、他の東北でのプロジェクトにも用いられると思われますが、日本の「特別豪雪地帯」[8]で米国の事業者が関わる大規模メガソーラー事業において、果たしてどのような(コスト面の合理性も満たす)手法が確立されるのか、強く興味を惹かれるところです。
もっともコストの合理性については、[1]で記載されていない売電額(円/kWh)が幾らかによっても、大きく変わってくるとは思いますが。
- [1]<メガソーラー>100MW 国内最大級施設建設へ(河北新報、2017/7/13付)
- http://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201707/20170713_53009.html
- [2]建設中/各種準備手続中(Sonnedix社)
- http://www.sonnedix.jp/power-plants/list-of-plants/%e5%bb%ba%e8%a8%ad%e4%b8%ad%e5%90%84%e7%a8%ae%e6%ba%96%e5%82%99%e6%89%8b%e7%b6%9a%e4%b8%ad/?lang=ja
- [3]稼働中/設備導入完了(同上)
- http://www.sonnedix.jp/power-plants/list-of-plants/%e7%a8%bc%e5%83%8d%e4%b8%ad%e8%a8%ad%e5%82%99%e5%b0%8e%e5%85%a5%e5%ae%8c%e4%ba%86/?lang=ja
- [4]大石田町(ウィキペディア)
- [5]北村山郡(同上)
- [6]メガソーラー計画、事業者の説明まだ 大石田町長「話聞いて賛否判断」(山形日報、2017/6/7付)
- [5]北村山郡(同上)
- http://yamagata-np.jp/news/201706/07/kj_2017060700117.php
- [7]ユニバージー75合同会社の詳細(「法人.info」内)
- https://www.houjin.info/detail/4013303002765/
- [8]豪雪地帯(および特別豪雪地帯)の指定地域(ウィキペディア「豪雪地帯」内)
2017年04月27日
Trina Solar社が「Fortune Solar Holdings」による子会社化で株式非公開に、今後は更に投資家コンソーシアムが買収する予定
既に1ヶ月以上前になりますが、Trina Solar社が2017年3月13日に、
- 「Red Viburnum Company Limited」(※「Fortune Solar Holdings Limited」の完全子会社)との合併を完了した。
今回は、Trina社の過去の発表[2]〜[4]、またBloombergの報道[5]と合わせて、この合併に関して読み取れる主な情報を抜き出してみました。
<合併の経緯と予定>
2016/8/1 | 「Fortune Solar」「Red Viburnum」との間で合併契約を締結した。
存続会社はTrina Solar。 この合併において、Trina社の普通株式1株は、現金0.232米ドルを受け取る権利と交換される。 |
同12/16 | 臨時株主総会を開催。
株主投票により、この合併計画の承認(議決権の2/3以上が必要)を求める。 (※Trina社の会長兼創設者であるGao氏は、議決権の約5.5%を保有している) |
2017/3/13 | 合併契約を完了した。
これによりTrina社は、Fortune Solarの完全子会社となり、上場会社ではなくなった。 |
その後の予定 | 合併後のTrina社は、投資家のコンソーシアムにより買い取られる計画。
これは全て、現金により行われる。(買取額は約11億ドルの見込み) 投資家コンソーシアムのメンバーは、
(※ただし、この買収が何時実施されるのかは、記載が無い。) |
また、この非公開化を目指す背景・理由について、Trina社の発表[1]〜[3]には全く記載がありません。
ただしBloombergの記事[4]では、次のような内容の記述があります。
- 今回の買収は、
- 太陽電池パネルの設置は記録を更新しているが、メーカーの利益は回復していない
- Trina社は、何年も損失を出してきた。
これは- 技術コストの高騰
- 過剰供給
- Trina社は2013年に黒字化し、更に2014年にはYingli Green Energy社を追い越して、最大の太陽電池パネルメーカーになった。
- 太陽電池パネルの価格は
- 供給過剰
- 低い参入障壁
親会社となった「Fortune Solar Holdings」については、企業の公式サイトは見つからず。
Bloombergのサイト[5]でも、殆ど情報が掲載されておらず、非公開企業(Private Company)であることしか判りません。
ただ今回の合併において、Trina社については、最終的に投資家コンソーシアム(創業者を含む)の手に渡る予定とのこと。
そのため、Fortune Solar社が本格的・長期的に経営に関わったり、ましてやTrinaのブランドが変わる可能性は、ほぼ無いものと考えます。
株式の非公開化は、その企業にとってデメリットが大きいのでは?と思っていましたが、実際には米国では意外にも、売上高10億ドル超の大企業でも、非公開企業が多いそうです[6]。
現在の太陽電池パネル市場に目を向けると、製品価格の低下が著しく、他の大手メーカーでも利益率の低下が顕著な状況。
そのため今回のTrina社の動きについても、株主への配慮(短期的な業績アップ)が必要な株式上場の継続は、企業の長期的な運営・存続を目指すうえでデメリットのほうが大きい、と判断されたものと推測します。
最後に、Bloombergの記事で一つ気付くのは、パネル価格が「打撃を受け」始めたのは3〜4年前(2013〜2014年)ですが、これはちょうどTrina社がメーカー首位になった年(2014年)と重なります。
かつてのSuntech PowerやQ-cellsの事例もありますが、太陽電池パネル市場において、生産量・出荷量が世界トップとなることは、一般的な(1位が良いという)イメージとは反対に、どうやら決して良いこととは言えないようです。
また、(販売規模や価格競争力を追い求めるのではなく)得意分野や付加価値などで独自のポジションを築いていくことが、長期的に日本メーカーが生き残っていく道なのでは・・・とも考えさせられます。
- [1]Trina Solar Limited Announces Completion of Going-Private Transaction(Trina Solar社、2017/3/13発表)
- http://ir.trinasolar.com/phoenix.zhtml?c=206405&p=irol-newsArticle&ID=2253566
- [2]Trina Solar Enters into Definitive Agreement for Going Private Transaction(同上、2016/8/1発表)
- http://ir.trinasolar.com/phoenix.zhtml?c=206405&p=irol-newsArticle_print&ID=2191453
- [3]Trina Solar Announces Extraordinary General Meeting of Shareholders(同上、2016/11/7発表)
- http://ir.trinasolar.com/phoenix.zhtml?c=206405&p=irol-newsArticle_print&ID=2219967
- [4]Trina Takes Biggest Solar Maker Private in $1.1 Billion Deal(Bloombergの記事、2016/8/1付)
- https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-08-01/trina-solar-to-go-private-in-1-1-billion-deal-led-by-chairman
- [5]fortune solar holdings ltd(Bloomberg)
- https://www.bloomberg.com/profiles/companies/1430124D:US-fortune-solar-holdings-ltd
- [6]米国における非公開企業と非公開化の動向(日本政策投資銀行、2006年3月)
- http://www.dbj.jp/reportshift/area/newyork/pdf_all/mini0603.pdf
2017年03月27日
北九州の「新菱」社が、九州・山口で太陽電池モジュールリサイクルのモデル事業を実施中、回収ボックスを各地に設置
西日本新聞の記事(2017/3/23付)[1]で、
- 北九州の「新菱」社による、太陽電池モジュールリサイクルの事業化に向けた取組み
今回は同事業の公式サイト(2016/12/5公開)[2]等の内容と合わせて、主な情報を抜き出してみました。
<広域回収のモデル事業>
平成30年度以降の事業化を目指している。
開始時期 | 2016/12 |
対象地域 | 九州・山口地域の計8県 |
回収設備 | 専用の回収ボックス
(モデル事業では、約20ヶ所設置している) |
費用・料金 |
|
回収実績 | 記事[1]の時点までで数t。
(※モジュール約120枚(一戸建て住宅12件分)が、重さ約2t) まだ認知度は低いが、熊本地震の被災地からの回収も行った。 |
<リサイクル技術>
- 開発の経緯:
新菱は2010年度から、NEDOの支援を受け、技術開発を開始。
「北九州産業学術推進機構(FAIS)」との共同により、処理方法を開発した。 - 特徴・メリット:
封止材は加熱・燃焼処理 モジュールのアルミ枠とバックシートを取り除いた後、封止材のEVAは、加熱・燃焼によって除去する。
これにより、カバーグラスを板のままリサイクル可能。
また燃焼においては、燃料(LPG)の80〜90%を、EVA自身の燃焼熱で賄うことができる。多様なモジュールに対応 結晶シリコン型・薄膜シリコン型・CIS化合物型に対応する。 リサイクル率が高い バックシートと端子ボックス以外を、全てリサイクル可能。
リサイクル率は、2015年度に95%を達成している。 - 今後の方針:
破損の程度が大きいモジュール(折れ曲がり等、モデル事業では回収の対象外)にも対応できるよう、技術開発を進める。
太陽電池モジュールの一般的な寿命や、また住宅用蓄電池のリリースが相次いでいることも考えると、FITの期限切れ後に、果たしてどれだけの太陽光発電設備が、そのまま解体・廃棄の対象になるのかは判りません。
ただモジュールの故障や、予測不能な災害(地震など)による破損は、一定の割合で常に起こるものと思われるので、太陽光発電の導入量自体が大きく高まっている現状において、リサイクル体制を早急に確立することは、やはり重要・必須のことだと考えます。
今回の新菱社の技術は、用いるエネルギー量の大幅な節約や、素材のリサイクル率の高さ、そして対応できるモジュールの幅広さが大きな魅力であり、利用しやすい回収体制の実現と合わせて、事業化に期待がかかります。
ただNEDOが支援するプロジェクト[4]では、EVAを加熱したカッターで切断・分離する技術もあり、どの処理方法がどう実用化・事業化に漕ぎ着けていくのかは、今後に注目していきたいところです。
- [1]太陽光の廃パネル回収 「熊本地震復興の手伝いに」 北九州の企業、リサイクルに挑む(西日本新聞)
- https://www.nishinippon.co.jp/nnp/kumamoto/article/316415
- [2]廃太陽光パネル(廃PVパネル)リサイクルモデル事業(公式サイト)
- http://www.pvr-kyushu.jp/
- [3]低炭素化社会の実現に向けて、北九州市内の企業が研究開発に取り組んでいる施設を公開します。(FAIS)
- https://www.ksrp.or.jp/fais/news/2013/02/07/%25E5%258D%25B0%25E5%2588%25B7%25E7%2594%25A8%25E6%259C%25AC%25E6%2596%2587.pdf
- [4]太陽光発電の大量導入社会を支えるプロジェクトで新たにテーマを採択(NEDO)
- http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100454.html
- 北九州市と地元企業などが、廃棄太陽電池パネルのリサイクル技術開発に取り組む(2010/08/19)
2017年02月27日
アスクルの倉庫火災の長期化は屋上の太陽電池モジュールが一因、感電の危険性で放水の妨げに
通販企業「アスクル」の倉庫火災についての記事[1](2017/2/20付)の中で、
- 屋上に設置された太陽電池モジュールが、消防活動が長期化する一因になっている。
まずその記事から、火災の概要を抜き出してみました。
建物
場所 | 埼玉県内 |
階数 | 3階建 |
延べ床面積 | 約7万2000m2 |
構造、保管品 |
|
消防活動の経緯(※2/20まで)
2月16日 |
|
2月17日 | 2階・3階に窓が殆ど無いため、重機により穴を開け、内部への放水を開始。 |
2月18日 | 夜には一旦、2階の火を消化できた。 |
2月19日 | 日付が変わった直後に、3階で爆発が2回発生。
(スプレー缶に引火したとみられる) これにより、火が再び強まった。 |
2月20日時点 | 約4万5000m2(全体の6割以上)が焼けた。
ただ、火は徐々に収まっているようで、消防隊員が様子を確認しつつ内部に進入し、消火活動を行っている。 |
※その後24日時点で、まだ完全な鎮火に至っていない[3]。
消火活動が長期化した理由
- 放水が困難:
- 窓が2階・3階に殆ど無く、外からの放水が難しい。
- 屋上に太陽電池モジュールがあり、水をかけると消防隊員が感電する危険性がある。
このため、屋上に直接放水することができなかった。
- 建物内部の高温化:
内部の温度は、一時500度に達した。
この熱で壁の歪み等が起き、倒壊の危険性が生じたため、慎重に活動する必要があった。
私が見た新聞記事では、倉庫上空からの写真が掲載されており、穴が開いて大きく歪んだ屋上に、確かに太陽電池モジュールらしきものが並んでいましたが、我ながら能天気なことに、実際に放水の妨げになっていたとは夢にも思いませんでした。
消防活動における感電の危険性は、産業用の施設(倉庫など)だけでなく、住宅の屋根設置においても、変わらないことなのではないでしょうか。
2011年のFIT導入以降、国内で太陽光発電の導入が飛躍的に進んだことから、設備規模の大小はともかく、今後も同様の問題(火災時に消防活動の障害になること)は、幾つも起こってくるものと予想します。
そのため、まず既存設備で安全に消火活動が出来る手段・方策(モジュール表面を何かで覆いつくし、発電を停止させる等)を、早急に確立・普及する必要があると考えます。
また、今後屋根に設置する設備においては(特に今回のような規模の建物では)、モジュール各々が非常時に出力を停止できる機能(例えばTigo Energy社の「TS4プラットフォーム」)を付加することを、義務付ける必要があるのかもしれません。
個人的にそのような方策は、屋根設置設備だけでなく、津波の到来が予想される場所の野立て設備にも必要と考えますが、とにかく太陽電池モジュールの価格低下が進む中で、災害時にモジュールを取り扱わざるを得ない人間の安全を確保することも、十分に考慮する必要があるのではないでしょうか。
- [1]アスクル倉庫火災 再び爆発 消火活動難航 鎮火めど立たず(NHK)
- http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170220/k10010883451000.html
- [2]アスクルの倉庫火災と、太陽光発電システムにおける災害リスク(ブロゴス)
- http://lite.blogos.com/article/211311/
- [3]アスクル火災、3階でまだ炎…残り火に放水続行(読売新聞)
- http://www.yomiuri.co.jp/national/20170224-OYT1T50203.html
- [4]月刊「Solvisto」誌 2014年4月号30-32p「日本太陽エネルギー学会 『太陽光発電システムの火災リスク』セミナー開催」
- 東京消防庁が「太陽光発電設備に係る防火安全対策検討部会」の検討結果を公表、モジュールの燃焼性は低い(2014/05/11)
- 消防庁が危険物取り扱い施設への太陽光発電設置について、全国共通の安全基準を検討開始(2014/07/08)
- 東京消防庁が「太陽光発電設備に係る防火安全対策の指導基準」を公表、消防作業の安全を確保(2014/07/12)
- JPEAが水害時における太陽光発電設備への対処方法を発表、太陽電池パネルの発電などに要注意(2015/09/22)
2017年02月20日
ネクストエナジー社が産業設備向けのモジュール洗浄サービスを開始予定、自走式洗浄機「PV Cleaner」で洗浄時間を1/3に短縮
ネクストエナジー・アンド・リソース社が2017年2月16日に、
- 国内の産業用太陽光発電向けに、太陽電池モジュールの機械洗浄サービスを開始する。
概要は次の通り。
背景
- 現在は多くの太陽光発電設備で、太陽電池モジュール表面の清掃作業について、人手と時間を費やすことで、当初の事業計画を上回る保守管理費用が顕在化している。
サービスの特徴
- 自走式洗浄機「PV Cleaner」を採用:
小型な組立式 野立て・屋根上の両方に対応できる。 作業コストを大幅低減 洗浄時間を従来の1/3に短縮できる。
また、洗浄ムラや洗い残しも無い。走行性能 - 駆動能力:0〜35度
- モジュール間の隙間の走行:50mm
- 段差走行:±30mm
また、落下防止センサーも搭載。 - 発電量アップに寄与:
洗浄実施後に、5ヶ月間の発電量が平均3%向上することを確認している。
その他
- サービス開始日:2017年3月1日から順次
- 参考価格:1MWあたり50万円(税別)〜
※施工費・水代・諸経費を含む。 - 取扱店舗:自社の営業加盟店
ただし当記事の作成時点(2017/2/17)では、ネクストエナジー社のサイトに、このサービスに関する発表・情報は掲載されていませんでした。
[1]に掲載されている大規模設備の写真を見ると、人手で洗浄作業を行う場合の時間的・経済的負担の大きさが、容易に想像されます。
今回のサービスで用いられる「PV Cleaner」は、モジュール上を実際に走行・洗浄するうえで、かなり柔軟な対応能力を実現していることが伺えます。
ただ、最大角度(35度まで)の点から、現状では、設置角度がより急な降雪地域の設備には、使用できないと思われますが、この点は今後の課題なのかもしれません。
いずれにせよ、FITで大量導入された太陽光発電設備の稼動期間が長くなるに連れて、大規模設備(メガソーラー等)における洗浄作業の機械化が、更に進化・洗練していくことは、間違いないものと考えます。
- [1]ネクストエナジー、太陽電池モジュール洗浄機を開発 太陽光発電設備の洗浄時間を3分の1に短縮し、 大幅なコストダウンが可能(@Press)
- https://www.atpress.ne.jp/news/122130
SolarWorld社がPERC単結晶型への注力・ドイツ国内の生産体制集約を決定、中国製モジュールの大量流入による価格急落に対処
SolarWorld社が2017年2月10日に、
- 競争力強化のための、2017年度からの事業方針
概要は次の通り。
- 製品の取捨選択:
今後は単結晶シリコン型+PERC技術にのみ注力する。
(※従来は多結晶型も製造していたが、将来的には単結晶型のみを製造する)
これは、多結晶型の変換効率が、技術的な理由で劣るためである。
研究開発をする子会社「SolarWorld Innovations GmbH」では、PERCと統合可能な変換効率向上プロセスに注力する。 - 生産体制の整理:
ドイツ国内では- Arnstadt拠点でのモジュール生産
- Freiberg拠点でのセル生産
- セル生産:Arnstadt
- モジュール生産:Freiberg
これは、小規模生産を移転することで- 規模の経済の高速化
- 冗長性の削減
- 生産プロセスのシンプル化
(※米国については、Hillsboro拠点が既に、PERCセル・モジュールを独占的に生産している) - 人員の削減:
上記の拠点整理に伴い、2019年までに約400人の労働者を削減する見込み。 - モジュール出荷量の拡大:
上記の措置により、太陽電池市場のこれまでに無い困難な局面から脱出し、2019年には約2GW/年に拡大することを目指す。
また[2]では、この措置に関する更なる詳細情報として、CEOのFrank Asbeck氏へのインタビュー内容が掲載されています。
その中から、主な内容を抜き出してみました。
- 自社の方針:
SolarWorld社はプレミアム品質(長寿命・高効率)の製品を提供しており、これと顧客からの忠誠心(loyalty)によって、市場競争から距離を置いている。
これは、安価な中国などの製品に対抗する唯一の方法である。
しかしここに来て、更に事業の焦点を絞る必要が生じている。 - 生産品と技術の選択:
- 単結晶シリコン型の変換効率には、最大の将来性を見ている。
既に、単結晶PREC技術を量産ラインに導入したことで、出力300W以上のモジュールが実現されている。
(※3年前の多結晶型技術では、250Wだった)
自社は、他の技術(ヘテロ接合、ペロブスカイト等)ではなく、単結晶PERC技術の進歩に注力する。 - 多結晶型については、2017年に残っている受注分には当然対応するが、将来的には生産を停止する。(単結晶型に完全に移行)
- ガラス−ガラスモジュール(両面ガラスモジュール)の需要は増えているが、ガラス−フィルムモジュール(従来型のモジュール)の生産は続ける。
- 単結晶シリコン型の変換効率には、最大の将来性を見ている。
- 生産拠点の集約:
- ドイツ国内の2拠点では、優れた生産性を実現してきたが、今日ではコストが高く、生産を集約する必要が生じている。
SolarWorld社の競合相手はアジアにあるが、それらは国の金により、巨大な生産設備を設けている。
このため、セル生産拠点を2ヶ所に分けている現状では、対抗できない。 - Arnstadtでは、3年前にBosch社から欧州最大のセル生産拠点を取得して以来、Freibergの労働者の助力を得て生産能力の拡大を続けてきた。
このため今回は、ドイツ国内でのセル生産をArnstadtに集約するものである。 - 同様の措置は、モジュールにおいても適用され、Freibergのモジュール工場が存続の対象となる。
- 米国については、Hillsboro拠点の生産品のみで、同国での需要を賄うことを目指している。
- ドイツ国内の2拠点では、優れた生産性を実現してきたが、今日ではコストが高く、生産を集約する必要が生じている。
- 2016年の市場や自社の動向:
- SolarWorld社では、上半期はフルオーダーを受注し、生産設備もフル稼働した。
これにより、第2四半期は営業利益が再び黒字に転換した。 - しかしその後、中国が突然
・過剰生産された国内製モジュールを、全て海外に輸出する。
との方針を決定した。 - これは生産コストを下回るダンピング価格で行われ、結果としてモジュール価格は急激に20〜30%下落した。
そのためSolarWorld社は、(他の多くのメーカーと同様に)生産量を削減。
更に、販売促進のための特別な対策を講じることとなり、その結果として2016年業績は赤字となった。
- SolarWorld社では、上半期はフルオーダーを受注し、生産設備もフル稼働した。
- 今後の市場の見通し:
- 2017年の世界市場は、中国を除いて需要が拡大するとみている。
中国国内の新規設置は、2016年上半期には記録的な増加をみせたが、2017年の政府目標はそれより大幅に下回っている。
そのため他の市場では、需要が高まるものの、中国のダンピングに対処する必要が生じる。 - 米国については、大部分の地域において、他の発電方法よりも太陽光発電が安価になっている。
これは、トランプ氏と言えども否定できない。
太陽光発電の導入を拡大しようという多くのイニシアチブは、個々の州から来ている。
- 2017年の世界市場は、中国を除いて需要が拡大するとみている。
Frank Asbeck氏へのインタビュー[2]では、プレスリリース[1]だけでは良く判らない背景が詳細に述べられており、単に一社の動向に留まらない、非常に興味深い内容だと感じるものです。
SolarWorld社はかつて、中国政府による同国メーカーへの実質的な支援を批判し、それが米国・欧州での(中国メーカー製モジュールを対象とする)反ダンピング関税・相殺関税の導入にもつながった筈ですが、結局は大規模生産能力を背景とする中国メーカーの市場への影響力は、殆ど変わっていないように思われます。
日本メーカーも最近の業績では(CIS型・結晶シリコン型を問わず)苦境が目立っており、(良し悪しはともかく)現実問題として、今回のSolarWorld社のような思い切った体制変更が、必要になるのかもしれません。
またこうなると、好奇心として、中国国内でのモジュール価格が一体どんな水準なのかも気になるところですが、同市場については「価格が安すぎて日本メーカーは参入できない」との話もあり[3]、海外メーカーにとっては完全に視野の外と思われます。
もう一つ、SolarWorld社が現状で、PERC単結晶型に最大の可能性を見出していることも、非常に興味深い点です。
日本メーカーにおいては、先駆者のパナソニックは当然として、シャープ、長州産業、カネカと、多くのメーカーでヘテロ接合型を次世代の主流技術とする姿勢が伺え、この点はSolarWorld社と明確に異なっているようです。
結晶シリコン型太陽電池が技術的にもまだまだ、変革・進歩の途上にあることを感じるものです。
- [1]SolarWorld AG strengthens its competitiveness(SolarWorld社)
- http://www.solarworld.de/en/group/press/press-releases/corporate-news-ad-hoc/single-ansicht/article/solarworld-ag-strengthens-its-competitiveness/
- [2]Sunday Extra: Interview with Dr.-Ing. E.h. Frank Asbeck(同上)
- http://www.solarworld.de/en/group/press/press-releases/press-release/single-press-releases/article/sunday-extra-interview-with-dr-ing-eh-frank-asbeck/
- [3]世界の太陽光発電、昨年は5割増。なぜFITがない米国が2位?(ニュースイッチ)
- http://newswitch.jp/p/7736
- 独SolarWorld社が生産拠点を再編する方針、米国内は2工場を1工場に集約(1工場は閉鎖)、ドイツでは生産能力が1,000MWに拡大される見込み(2011/09/05)
- 独「SolarWorld」社のCEOが、中国政府による同国太陽電池メーカーへの支援(低利融資)を批判(2011/09/27)
- 独SolarWorldの新モジュール「Sunmodule Protect」は両面をガラス化、高い耐久性と30年の出力保証を実現(2013/11/15)
- Bosch社が独Arnstadtの太陽電池セル・モジュール生産事業を、SolarWorld社に売却する方針(2013/11/28)
- EU加盟国(27ヶ国)のうち15ヶ国が、中国製太陽電池パネルへの反ダンピング関税に反対を表明(2013/05/30)
- 欧州委員会が中国製太陽電池パネルのダンピング解決策を承認、EU加盟国はほぼ満場一致で支持とのこと(2013/08/04)
- EU ProSunが、中国太陽電池メーカーが多種の政府補助金(売上高の11.5%相当)を受けていることを欧州委員会が認めた、と発表(2013/08/31)
- 米商務省が、中国製太陽電池への反ダンピング関税(18.32〜249.96%)・相殺関税(14.78〜15.97%)の課税を決定、実行はITCによる判断待ち(2012/10/12)
- 米ITCが、中国・台湾製の特定の結晶シリコン太陽電池製品による、米国産業の損失を判断(2014/02/16)
- 米商務省が、中国・台湾製結晶シリコン太陽電池のダンピング幅・補助金幅(最終調査結果)を公表(2014/12/27)
- 米国での中国製太陽電池パネル価格は40〜55セント/W、中国市場での供給過剰が遠因(2016/10/03)
- 米SEIAのレポート「Solar Market Insight 2016 Q4」で、2016年3QのUtilityのPPA価格は35〜60ドル/MWh、システム価格は住宅2.98ドル/W・非住宅2ドル/W未満(2017/01/09)
2016年12月12日
タイ国「デルタエレクトロニクス」の工場が太陽光発電設備(計510kW)を導入、CIS薄膜モジュールとデルタ電子製のコンパクトなパワコンを用い、発電量は全量を自家消費する予定
ソーラーフロンティア社が2016年12月6日に、
- 台湾「デルタ電子」のタイ国子会社「デルタエレクトロニクス」の工場敷地内で、太陽光発電プロジェクト4件(計510kW)が完工した。
発電設備の概要は次の通り。
機器 | 太陽電池モジュール | ソーラーフロンティア社のCIS薄膜型
(2つの工場の、屋上と駐車場に設置) |
パワコン | デルタ電子の「PRI M50A」「PRI-M20A」 | |
発電電力量 | 合計で793MWh/年の見込み。
(全量を、デルタエレクトロニクス社で自家消費する予定) | |
工事の期間 | 2016年7月〜10月
(EPCは、現地のEPC専門会社が担当) |
510kWという規模ながら、発電電力を(売電ではなく)全て自家消費することが意外でしたが、それだけ
- 協力関係にあるソーラーフロンティア社の太陽電池モジュール
- 自社のパワーコンディショナー
また、それらを自社子会社の拠点に実際に導入し、長期に渡り使用することで、その実用性を(実証実験というほど厳密ではなくとも)体感・検証する、という狙いもあるのかもしれません。
ちなみにデルタ電子のパワコンですが、オムロン社の三相用と比較すると
メーカー・機種 | 定格出力 | 外形サイズ | 重量 |
デルタ電子「PRI M50A」[3] | 50kW | 612×740×278mm | 74kg |
オムロン「KPT-A123」[5] | 12.375kW | 600×675×305mm | 約63kg |
であり、「M50A」の(出力に対する)コンパクトさが際立ちます。
もっともこれは、あくまで仕様の数値の単純な比較であり、実際には想定用途の違い等も考慮する必要があるとは思いますが、それでもデルタ電子のパワコンが持つ高い独自性が感じられます。
- [1]ソーラーフロンティアとデルタエレクトロニクス、タイ王国における太陽光発電プロジェクトで協力(ソーラーフロンティア社)
- http://www.solar-frontier.com/jpn/news/2016/C060182.html
- [2]Delta Electronics (Thailand) Public Co., Ltd.
- http://www.deltathailand.com/main.php
- [3]M30A / M50A(デルタ電子)
- http://www.deltaww.com/Products/CategoryListT1.aspx?CID=0501&PID=2075&hl=en-US&Name=M30A%20/%20M50A
- [4]RPI M15A / M20A(同上)
- http://www.deltaww.com/Products/CategoryListT1.aspx?CID=0501&PID=1152&hl=en-US&Name=RPI%20M15A%20/%20M20A
- [5]屋外仕様 KPTシリーズ(オムロン社)
- http://www.omron.co.jp/energy-innovation/product/kp/kpt.html
- デルタ電子がパワコン新機種「RPI H4J」(4kW)を発表、変換効率96.5%で屋外設置可能な(2014/02/05)
- デルタ電子のパワコン「RPI-M20A」(20kW)が、日本のゴルフ場跡地メガソーラー(15MW)で、分散型パワコンに採用(2015/01/16)
2015年08月27日
NEC等が太陽光発電の出力制御技術を開発、「信頼度つき発電量予測」や抑制量の最適配分・一括制御が可能
NEC社が2015年8月24日に、
- 東京大学・東京農工大学の研究者と共同で、電力会社やアグリゲータ(エネルギー管理サービス事業者)向けの太陽光発電の出力制御技術を開発した。
概要は下記の通り。
背景
- 日本国内では再エネ発電の普及・導入が進む中で、余剰電力(需要を上回る供給)を防ぐために、発電出力制御システムの導入も進められている。
ただし現状では、- 過剰な発電抑制を要求する傾向(正確な発電量予測が困難なため)
- 発電抑制量の公平な分担の実現
特徴
- 新開発した「信頼度つき発電量予測」技術を採用:
太陽光発電の予測発電量に、独自手法で導き出す「当たる確率(予測確率)」を付加する。
(この指標の算出には、数千個超の気象パラメータ(雲の量や気温など)を用いる)
これにより電力会社等では、例えば- 「予測確率95%での発電量は、下限X[kW]〜上限Y[kW]」
- 抑制量の最適配分と一括制御を実現:
独自のアルゴリズムにより- 上記技術による発電量予測
- 過去の出力抑制の履歴
- 気候条件
これにより、電力会社やアグリゲータでは- 公平性の考慮
- 過剰抑制の低減
更に決定した抑制量は、制御対象の発電事業者に一斉伝達して制御できる。
効果
- NECが、電力システムの運用シミュレーションを行い評価した結果では、
- 従来よりも抑制日数は多くなるが、発電抑制量は低減できる。
2014年秋に一部地域で系統連系の限界が顕在化し、それを受けて2015年1月にはFITに「指定ルール」(無補償での出力制御時間の上限撤廃)が導入されましたが、では実際にどのようなシステム・技術により、抑制量や抑制対象の設備・事業者を決定するのか、という点は全く見えないままでした。
今回の技術を、どの電力会社やアグリゲータが採用することになるのかは、現状では判りませんが、少なくとも抑制量の予測や割り当ての方法については、いち消費者として大幅にイメージしやすくなったと感じます。
恐らく他の企業でも現在、同様の用途の技術は開発されていると思いますが、発電量予測の信頼度アップと、適正な(過剰でなく公平な)抑制実現の2点については、開発者を問わず技術の核心部分になると思われるので、そこでどのような違い(手法など)が出てくるのかは、注目したいところです。
- [1]NEC、太陽光発電による余剰電力の抑制量を適切に配分する出力制御技術を開発(NEC社)
- http://jpn.nec.com/press/201508/20150824_01.html
2013年03月09日
ひたちなか市内の太陽光発電施設の建設現場で、太陽電池パネル138枚などが盗難
・窃盗:太陽光発電施設でパネル盗まれる−−ひたちなか /茨城(毎日新聞)
http://mainichi.jp/area/ibaraki/news/20130308ddlk08040169000c.html
上記URL先ページによると、主な状況は下記の通り。
・発見時刻:7日の午前6時30分頃(作業員の方が発見)
前日の午後8時頃(作業員の帰宅時)には、異常は無かった。
・盗まれた機器:
・設置前の太陽電池パネル(166cm×99cm×4.6cm、重さ20.2kg):138枚(約414万円相当)
・クレーン付き4tトラック:1台
・建設用測量機器
等。(被害総額は計約1,095万円)
・現場の状況:
・建設現場の入り口は、エンジンキーを外したトラックで塞いでいた。
・測量機器などは、事務所や倉庫に鍵をかけて保管していた。
(しかし、窓ガラスが割られて盗まれた)
太陽電池パネルの被害額が1枚あたり3万円に満たないことに驚きましたが、現在はその辺りが価格の相場になっているんでしょうか?
現場にパネルを置いたままだったのは、結果から見れば迂闊だったとは思いますが、「そんなところに置いておくほうが悪い」という考え方はしたくないものです。(保管方法の改善の余地はあるにしろ、「悪い」のはあくまで盗んだ犯人)
ともかく、産業用太陽光発電設備の建設計画が急増している現状では、機器・設備の盗難にも十二分に気をつける必要がある、ということでしょうか。
※関連記事:
・南箕輪村の大泉所公衆トイレの太陽光発電装置が盗難、排泄物処理装置が使用できず(2010/05/12)
・茨城県水戸市内で、発電用に設置されている太陽電池パネル26枚が盗難(2012/07/25)
・長野県内で、建設現場から盗んだ太陽電池パネルで5年間生活していた容疑者が逮捕(2012/09/05)
2012年08月15日
米倉山太陽光発電所で、超伝導を用いる次世代型フライホイール蓄電装置の実証実験が行われる予定
・鉄道総合技術研究所
等が、超電導を用いる次世代型フライホイール蓄電装置の開発に取り組んでいるとのこと。
(ニュース記事)
・超電導蓄電 国が補助…15年度から実証実験(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamanashi/news/20120813-OYT8T01294.htm
上記URL先ページによると、取り組みの概要は
・背景:
従来のフライホイール蓄電装置では、内部の円盤の軸の接続が回転で摩耗してしまい、この点が課題がとなっている。
・新技術の主な特徴:
リニア中央新幹線に応用される超電導技術を活用して、装置の円盤を常時浮上させる。
これにより、軸の摩耗発生を解消する。
・実証実験:
・開発予定の装置:
・サイズ:高さ3m・直径2m
・蓄電容量:300kWh
・場所:「米倉山太陽光発電所」(連携させるシステムは1MW)
・参加組織(担当):
・山梨県企業局
・鉄道総合技術研究所
・北杜市の「ミラプロ」(真空装置部品)
・東京都千代田区の「古河電気工業」(超電導ケーブルの研究開発)
・大阪市の「クボテック」(フライホイール)
・今後の予定:
・2012年度:設計
・2013〜2014年度:開発
・2015年度:米倉山太陽光発電所での実証実験を開始
等とのことです。
再生可能エネルギーの導入拡大とともに電力供給の安定化が課題となる中で、ニュース記事をチェックしている限りでは、フライホイール蓄電装置の話題は殆ど出てきておらず、関心の薄さを感じざるを得ません。
ただ超伝導を用いる装置では、鉄道総合技研のサイト[1]によると、フライホイールへの動力伝達も磁気を利用して非接触で行うとのことで、通常の化学的な蓄電池のコストがなかなか下がらない状況の中で、機械的な装置が十分な性能とコスト競争力を備える蓄電手段となり得るのか、強く注目・期待したいところです。
※参考サイト:
・[1]超電導磁気軸受を用いた鉄道用フライホイール蓄電装置の研究・開発(鉄道総合技術研究所)
http://www.rtri.or.jp/rd/division/rd79/rd7920/rd79200107.html
・[2]ミラプロ
http://www.mirapro.co.jp/index.html
・[3]エネルギー・スマートグリッド(古河電工)
http://www.furukawa.co.jp/zaimu/feature/business_energy.htm
※関連記事:
・山梨県甲府市の「米倉山太陽光発電所」(10MW)が、2012年1月27日に運転開始(2012/01/28)