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2018年07月25日

大規模太陽光発電所による電力網の安定機能に関する研究(First Solar社やNREL等が実施)が、「InterSolar EU」で「Outstanding Project Award」を受賞、大規模PVのゲームチェンジャーと評価

First Solar社が2018年7月12日に、

  • 大規模太陽光発電所により電力網安定のための各種サービスを行う研究が、「InterSolar EU」(独ミュンヘンで本リリース発表の前週に開催)で「Smarter E Awards program」の「Outstanding Project Award」を受賞した。
と発表していました[1]。

今回は、その概要をまとめてみました。


研究の体制
  • NREL(National Renewable Energy Laboratory)
  • CAISO(California Independent System Operator)
との共同。
研究の内容・成果
  • 300MWの大規模太陽光発電所(米カリフォルニア州)において、様々なタイプの有効電力・無効電力制御を行い、
    • 運転予備力(spinning reserves)
    • 負荷追従(load following)
    • 電圧支援(voltage support)
    • 出力変化(ramping)
    • 周波数応答(frequency response)
    • 変動の円滑化(variability smoothing)
    • 周波数調整(frequency regulation)
    • 電力品質の改善(improved power quality)
    を含むサービスを行った。
  • これらの制御により、太陽光発電所が
    • 周波数調整に関するグリッド信号に、素早く反応できる。
    • 従来の発電(熱、水力、ガスタービン等)よりも正確に反応し、タイトに調整できる。
    ということが示された。
「Smarter E Awards program」の審査員による評価
  • この研究は、
    • 太陽光発電所は、炭素排出源の必要性を低減するだけでなく、システム性能を改善し、極めて高いレベルで変動する発電方式とともに運用することもできる。
    という、ゲームチェンジャーとしての大規模太陽光発電所のコンセプトを、証明するものである。
  • 今回のプロジェクトの成果は、
    • 大規模太陽光発電所が、電力網の信頼性と安定性に貢献でき、重要なグリッドサービス(従来の発電方式に付属しているもの)を提供できる。
    ということを、利害関係者に確信させるためのドアを開くものとして、用いることができる。
研究の当事者による評価
  • 今回の賞は、ソーラー業界の全ての人にとっての賞である。
    この研究は、より多くの太陽光発電が電力網に接続でき、また太陽光発電産業の更なる成長が可能であることを、証明している。
    (First Solar社のシステム開発担当副社長)


この研究について詳しく解説しているレポート(70ページ弱)[4]が、NRELのサイト[3]に掲載されており、私も一通り読んでから記事を書くつもりでしたが、私の英語力+理解力では、半分ほどを読むのがやっとでした。

そのため、検証されたグリッドサービスの具体的な性能(従来の水力・火力による調整能力との比較)までは判りませんが、とりあえず「Advanced Inverter」([4]の5p)等を用い、短い時間周期(例えば4秒ごと)での情報収集と制御を行うことで、応答の速さや正確性が実現されたようです。


例えば電力系統の周波数が低下した際、従来の火力や水力発電では、発電用タービンと機械的に連動するガバナ(調速機)により、タービンに流入する水や蒸気の量を自動的に増やすことで発電出力を上げ、周波数を調整する筈です。(少なくとも私が電検三種で学んだときはそうだった)

この出力増加を、太陽光発電設備の電子制御(パワーエレクトロニクス)で行う場合、機械的な動作が無い分、応答速度や正確さが高まるというのは、確かに考えられることです。


また、太陽光発電設備の制御能力を高めることで、昼間の発電余剰分が大きいほどグリッドの調整能力も大きくなる、という記述([4]の4p)も、非常に興味深いです。

これが本当であれば、出力の変動が大きく電力系統の厄介者、と捉えられている感のある太陽光発電にとっては、文字通りの「ゲームチェンジャー」になると思われます。

そのため、今回の研究対象となった技術については、是非とも早期の幅広い実用化を、期待したいところです。


※参照・参考資料:
[1]First Solar Receives Outstanding Project Award at InterSolar EU(First Solar社、2018/7/12)
http://investor.firstsolar.com/news-releases/news-release-details/first-solar-receives-outstanding-project-award-intersolar-eu
[2]Energy Systems Integration Newsletter June 2018(NREL)
(※記事の3項目めが「NREL Collaboration with First Solar, CAISO Receives Outstanding Project Award」)
https://www.nrel.gov/esif/esi-news-201806.html
[3]NREL, California Independent System Operator, and First Solar Demonstrate Essential Reliability Services with Utility-Scale Solar(NREL)
https://www.nrel.gov/esif/partnerships-caiso-first-solar.html
[4]Technical Report: Demonstration of Essential Reliability Services by a 300-MW Solar Photovoltaic Power Plant(同上、上記ページ内)
https://www.nrel.gov/docs/fy17osti/67799.pdf
[5]spinning reserve(weblio)
https://ejje.weblio.jp/content/spinning+reserve

2017年02月06日

北陸電力が太陽光発電の「30日等出力制御枠」に到達、中国電力は0.46GWの空き有り

北陸電力中国電力が2017年2月の頭に、再エネの申込状況を発表していました[1][3]。

その中から、太陽光発電に関する数字を抜き出してみました。(※GWへの換算や一部数値の計算は、当ブログ管理人による)


電力会社 接続済み
契約申込済み
合計
30日等出力制御枠 空き容量
(※左の2項目の差)
北陸電力(2017/1/23時点) 1.10GW 1.10GW 0GW
(※上限に到達)
中国電力(同1/27時点) 6.14GW 6.60GW 0.46GW

いっぽう、大都市圏をカバーする3社(東京電力・中部電力・関西電力)のウェブサイト[4]〜[6]では、太陽光発電の申込状況に関する発表は、今回も特に掲載されていませんでした。


ちょうど1年前には四国電力が30日等出力制御枠に到達していましたが、今回は北陸電力が到達。

東京・中部・関西電力の3社以外では、まだ空きがあるのは中国電力だけになりましたが、その同社の空きも1年前(1.07GW)から半分以上(約0.6GW)の減少。

このぶんだと、今年中には上限に達すると予想されます。

年間の出力制御時間が無制限な「指定ルール」適用の地域が拡大し、加えて再エネ導入を進めようという政府の積極姿勢(新たな政策など)も見えない状況であれば、日本国内での太陽光発電の新規導入が、今後更に減速していくことは、残念ながら避けられないと考えます。


※参照資料:
[1]再生可能エネルギーの申込み状況(北陸電力)
http://www.rikuden.co.jp/koteikaitori/mousikomi.html
[2]太陽光発電設備の接続可能量(30日等出力制御枠)への到達について(同上)
http://www.rikuden.co.jp/press/attach/17012301.pdf
[3]再生可能エネルギーの申込状況(中国電力)
http://www.energia.co.jp/elec/seido/kaitori/moshikomi.html
[4]プレスリリース・お知らせ(東京電力)
http://www.tepco.co.jp/press/index-j.html
[5]プレスリリース 再生可能エネルギー(中部電力)
https://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/newene.html
[6]プレスリリース(関西電力)
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/index.html

※関連記事:

2016年02月08日

四国電力のPV受入量が2016年1月末に「30日等出力制御枠」に到達、北陸電力は残り0.2GW・中国電力は約1GW

太陽光発電の接続上限に達していない国内電力会社の一部が、2016年1月末時点における、太陽光発電設備接続・申込状況を発表していました[1]〜[3]。

主な数字は次のとおり。(※GWへの換算や、一部数値の計算は、当ブログ管理人による)


電力会社接続済み
契約申込済み
合計
30日等出力制御枠
(※2015/11に決定)
空き容量
(※左の2項目の差)
四国電力(2016/1/26時点)2.57GW2.57GW0GW(上限に到達)
北陸電力(同1/31時点)0.90GW1.10GW0.20GW
中国電力(同1/29時点)5.53GW6.60GW1.07GW

いっぽう、同じく接続上限に達していない残りの電力会社(中部・東京・関西)については、発表(プレスリリース)は見あたりませんでした。


四国電力については昨年11月時点で空き容量が20MWのみだったので、それから約2ヶ月後の上限到達は、当然といえば当然のことだとは思われます。

ただ、今後の接続申込分については指定電気事業者制度が適用されることから、実際の出力制御の見通しがある程度明確にならない限りは、四国電力管内での水上メガソーラー新設も、滞らざるを得ないのではないでしょうか。

他の電力会社では、中国電力はまだ1GW超の余裕がありますが、北陸電力は残り200MW。

国内「非住宅」の認定容量は、2015年8月末〜10月末の2ヶ月で2.1GWも減っています[4]が、新規受入れの余裕(指定電気事業者の適用前)が明確に縮小していることから、今後も「非住宅」の認定量減少は続いていくものと思われます。


※参照資料:
[1]太陽光発電設備の申込み状況(四国電力、2016/1/26更新)
http://www.yonden.co.jp/energy/n_ene_kounyu/renewable/moshikomi_jyokyo.html
[2]再生可能エネルギーの申込み状況(北陸電力、2016/2/5更新)
http://www.rikuden.co.jp/koteikaitori/mousikomi.html
[3]再生可能エネルギーの申込状況(中国電力、2016/2/4更新)
http://www.energia.co.jp/elec/seido/kaitori/moshikomi.html
[4]固定価格買取制度 情報公開用ウェブサイト
http://www.fit.go.jp/statistics/public_sp.html

※関連記事:

2016年01月22日

関西電力が太陽光発電の遠隔出力制御試験を実施中、指令サーバーは東京都内

2週間ほど前になりますが、関西電力が2016年1月8日に

  • 太陽光発電設備の遠隔出力制御発電量把握に関する実証試験を開始した。
と発表していました[1]。

試験の概要は次の通り。


背景・目的

  • 関西電力では現時点で、太陽光発電の出力制御が必要な状況にはなっていない。
    ただし今後のPVの導入拡大が見込まれるため、将来的には出力制御を行う可能性がある。
  • 現在のPVの出力制御においては、制御を行う前日に、発電事業者に対して翌日分の出力制御を指示する。
    しかし制御する電力量は、前日の発電量予測などを元に算出することから、必要以上の量となる場合がある。
  • 今回の実証試験では、双方向通信システムの導入により
    • PVの発電出力のリアルタイム把握
    • 出力制御の量・時間の精細化
    を行うことで、制御する必要の無い電力量を極力低減することを目指す。

使用する設備

設備設置場所
出力制御指令発信サーバー早稲田大学EMS新宿実証センター(東京都内)
太陽光発電設備 関西電力が保有する下記の6ヶ所。(※発電出力は[2]から抜粋)
  • 福井県:
    ・若狭おおい太陽光発電所(500kW)
    ・若狭高浜太陽光発電所(500kW)
  • 滋賀県:大津変電所の屋上
  • 大阪府:
    ・堺太陽光発電所(10MW)
    ・小曾根変電所の本館・別館の屋上

その他

  • 実施期間:2016年1月8日〜2月中旬の予定

太陽光発電の接続上限に達していない地域での出力制御試験は、昨年12月開始の東京電力に続くものですが、今回の関電では10MWの堺太陽光発電所が含まれており、発電設備の合計規模では東電を上回っているものと思われます。

ただ用いる指令サーバーの場所は、関西電力の管内ではなく、(東電の試験と同じ)東京都内の早稲田大学の拠点というのが非常に意外でしたが、出力制御の拠点となりうる施設が、現時点ではそれだけ限られている、ということなのかもしれません。

もう一点、太陽光発電の出力が小さくなる冬に実証試験を行うことの、有効性が気になるところですが、これは初の試験ということで、今回は実際の電力需給に影響の少ない期間を選んでいるものと推測します。


※参照資料:
[1]太陽光発電の遠隔出力制御実証試験の開始について(関西電力)
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2016/0108_1j.html
[2]再生可能エネルギーへの取組み 太陽光発電(同上)
http://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/newenergy/solar/index.html

※関連記事:

2015年12月26日

東京電力が自社管内で出力制御実証試験を開始、「中長期的観点」からのシステム構築や、HEMSとの連係を目指す

東京電力2015年12月16日に、

  • 自社管内の複数の太陽光発電設備を用いての、出力制御実証試験を開始した。
と発表していました[1]。

概要は次の通り。


使用する設備と設置場所

設備設置場所
出力制御指令発信サーバー早稲田大学EMS新宿実証センター(東京都内)
太陽光発電設備
  • 千葉県内:日立産機システム
  • 栃木県内:
    ・東光高岳の小山工場
    ・田淵電機
  • 神奈川県内:
    ・東京電力技術開発センター
    ・京セラ
    ・住友電気工業
  • 山梨県内:富士電機

目的・取組み

  • 出力制御システムの構築
    上記のサーバーと発電設備を双方向通信で接続。
    • 逐次の状況把握
    • きめ細かい出力制御
    により、出力制御量の極力低減を図り、中長期的観点に立った出力制御システムの構築を進める。
  • 分散エネ制御の共通フォーマットの構築
    信号プロトコルには「Open ADR 2.0b」を採用。
    太陽光発電に限らず、分散型エネルギー全般の制御を共通フォーマットで行う環境の構築を目指す。
  • HEMSと連係しての余剰電力の有効活用
    出力制御指令が出された際にHEMSと連係することで、家庭において
    • エネルギー機器の利用時間のシフト
    • 蓄電
    を行い、太陽光発電出力を抑制せずに有効活用することを目指す。
    (※実証実験では
    • 「早稲田大学EMS新宿実証センター」のスマートハウス環境
    • 「東京電力技術開発センター」の設備
     を使用)

今回のシステム構築における「中長期的観点」が、具体的に何を想定するものかは明記されていませんが、太陽光発電に関しては

  • 初期コスト低減の加速による、導入ペースの再加速
  • 長期稼動に伴う、設備の廃止やメンテナンスによる(恒久的または一時的な)発電停止
等の、今後想定される環境変化が生じた際にも、十分対応できるだけの制御システム構築を目指すものと推測します。

また実証試験に参加する太陽光発電設備の容量は、各社サイトで参照可能な情報[3]〜[6]の限りでも、数十kW〜数MWと幅広く、このあたりも実際の導入状況を想定したものと思われます。

気になる点としては、採用される通信プロトコル「Open ADR」[7]は、インターネット経由での通信を想定しているとのことなので、不正な侵入・制御を許さないためのセキュリティをどう確保するのかという点は、広く明らかにする必要があると考えます。


※参照資料:
[1]「次世代双方向通信出力制御緊急実証事業」における実証試験の開始について(東京電力)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2015/1264399_6818.html
[2]EMS(エネルギーマネジメントシステム) 新宿実証センター(早稲田大学)
http://www.waseda.jp/across/validationcenter/
[3]省エネモデル工場のご案内 習志野事業所(日立産機システム、計130kW)
http://www.hitachi-ies.co.jp/solution/energy_fems/model1/newene.htm#solar
[4]2014年11月3日 田淵電子工業太陽光発電所開業(田淵電子工業、525kW)
http://www.tabuchi-denshi.co.jp/news/127/ 
[5]自社工場敷地内メガソーラー施設の運転開始について(富士電機、2MW)
http://www.fujielectric.co.jp/about/news/detail/2013/20130415150020166.html
[6]工場・事業所における環境配慮の取り組み(京セラ、横浜事業所58kW)
http://www.kyocera.co.jp/ecology/eco/factory/factory_history.html
[7]OpenADRの標準化動向(NTT)
http://www.ntt.co.jp/journal/1310/files/jn201310038.pdf

※関連記事:

2015年05月09日

種子島でGW中に出力制御が実施、晴天のため1事業者・1MWを1日制御

九州電力が2015年5月7日に、

  • 種子島でゴールデンウィーク中に、再エネ発電の出力制御の指示を行った。
と発表していました[1]。

マスコミの報道[2]〜[5]と合わせて、概要は下記の通り。

  • 制御の対象日時5月5日9〜16時
    旧ルール(年間計30日まで無補償)に則って指示が行われた。
    (※FITに基づく出力制限の実施は、今回が全国の電力会社で初とのこと)
  • 制御指示の理由
    種子島は離島であり、電力系統が九州本土と結ばれていない。
    該当日は晴天の予報であり、太陽光発電の発電量が増え、島内の電力供給が需要を上回る可能性があった。
  • 制御対象
    • 事業者:再エネ事業者8社(島内で500kW以上の発電設備を持つ)のうちの1社
    • 出力1MW
    • 設備:太陽光発電と思われる。
      (※[5]では未公表とされているが、[2][3]では晴天による発電量増加に言及されている)

電力系統の規模が限られる離島とはいえ、系統の安定を妨げる可能性が実際に生じるほど、再エネ発電設備が稼動済みである点で、FITによる太陽光発電などの導入促進成果を、端的に表す事例だと考えます。

とはいえ、1MWの設備を丸1日停止したのは事実であり、島内の安定供給を脅かしうるだけの発電能力を、みすみす停止しなければならないのは、やはり非常に勿体無いことだとも感じます。

もっとも、九電はちょうど今月1日に、スマートグリッド実証試験を2年延長する方針を発表しており[6]、電力会社側での早急で有効な対策は望み薄。

それだけに、既に接続上限に到達している(そして日照が豊富な)九電管内で、今夏に出力制御がどれだけ実施されることになるのかは、非常に気になるところです。


※参照資料:
[1]種子島におけるゴールデンウィーク期間中の再エネ出力制御実績について(九州電力)
http://www.kyuden.co.jp/press_h150507-1.html
[2]九電、種子島で再生エネ発電の出力制限実施 5日、全国で初(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H24_X00C15A5PP8000/
[3]九電、再生エネ事業者に送電停止要請 種子島で全国初(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASH573T85H57TIPE007.html
[4]九電、種子島の再エネ事業者に出力制御を指示、全国初(日経テクノロジーonline)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20150508/417344/
[5]九州電力、種子島でFITに基づく初の出力制御−計1000kWを実施(日刊工業新聞)
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0820150508agay.html
[6]スマートグリッド実証試験の延長について(九州電力)
http://www.kyuden.co.jp/press_h150501b-1.html

2015年03月20日

欧州「ENTSO-E」が日食による太陽光発電の出力変動に備える、TSOs(送電系統運用者)の連携が肝

1ヶ月近く前になりますが、「ENTSO-E欧州送電系統運用者ネットワーク)」が2015年2月23日に、同3月20日日食時における太陽光発電の出力低下への対応方針を示したレポート「Solar Eclipse Impact Analysis」を発表していました[1]。

その中から(関連資料を含めて)、主な事柄を抜き出してまとめてみました。


日食の発生時間

  • UTC7:40〜11:50の間に、欧州全体〜大西洋を通過する。
  • 欧州各国での発生時間は、2時間〜2時間20分程度

太陽光発電と日食の関連

  • 電源の特性
    太陽光発電は揮発性かつ分散型の電源であり、その出力は日射量の変化に非常に敏感である。
  • 導入量の拡大
    欧州での再エネ発電による電力のうち、太陽光発電の占める割合は
    ・2002年:0.1%
    ・現在:10.5
    と劇的に拡大している。(※前回の日食は1999年)
    また欧州大陸地域のみでは、全電力需要のうち3%が、太陽光発電で賄われている。
    このため今回の日食は、欧州の電力系統における前例の無い試験となる。
  • 日射量変動の早さ
    日食における日射量変化のスピードは、通常の日の出・日没より高速であり、このためそれらと単純に比較することはできない。
  • 影響を受ける地域
    地域により影響の程度は異なるが、電力系統は相互接続されているため、(直接的・間接的を合わせて)全ての地域が影響を受ける。

太陽光発電からの電力供給量(MW)の変化予測

  • 欧州大陸
    • 晴天時予想との比較
      最大減少時(9時41分〜10時41分、晴天時だと50数GWの見込み)には、34GW減少する可能性がある。
    • 増減の勾配(MW/分)
      最大で
      ・9時〜9時20分あたり:マイナス400MW/分
      ・10時〜10時20分あたり:プラス800MW/分
      と、急激な変化が起こる可能性がある。
      (※ただし、当日の天候が晴天である保証は無い)
    • 国別
      発電容量に対する減少勾配予想(MW/分)のピーク(9時41分)が特に大きい地域は、
      ドイツ51
      イタリア21
      の2国。(他は0〜一ケタ%)
  • グレートブリテン
    • 供給量の変化の勾配
      減少・復帰とも、最大でも50MW/分を下回る見込み。

電力システムの対応

  • TSOs(送電系統運用者)間での運用調整
    非常に重要な点であり、徹底した業務計画に加えて、日食発生時には汎欧州の電話会議常時開設
    これにより欧州全域の制御室間で、情報の流通と電力システムの継続的な調整を行う。
  • 通常時の対策で対応
    日食向けの特別な対策は設計しておらず、通常運用における対策により対応する。
    ただし、日食は欧州大陸全体の電力システムに影響するので、対策の実行は通常より迅速になる可能性がある。
  • 事故情報の公表
    汎欧州のレベルでは、ENTSO-Eが「Crisis Communication Tool」を持っており、このツールによりメンバーに警告する。
    しかし国民(市場関係者・利害関係者を含む)への通知は、ENTSO-Eではなく、該当のTSOが行う。
    (運用中の電力システムに起こった事故については、該当する国・地域のTSOが、公共に知らせる責任を負っている)
  • 他の電源
    プログラム可能な他の電源(原子力発電所など)は、電力系統のバランスをとるために、間接的な影響を受ける。
    風力発電は、日食の日も通常どおり稼動する見込み。
    (風の予測は非常に成熟しており、現在の太陽光の予測より信頼性が高い)
  • 太陽光発電設備の所有者
    日食中に停止させておく必要は無いが、停止の必要性が生じた際には、属する地域のTSOから要請が送られる。

太陽光を急激に遮る日食が、太陽光発電の稼動に甚大な影響を及ぼすことは、言われてみれば至極当然のことですが、少なくとも個人的には、日本国内でこれまで、日食時のPV(ひいては電力系統)の対応についての議論や取り組みを見聞きしたことがありません。

今回は、太陽光発電の導入先進地である欧州における日食であり、日本も今後導入量が数十GWに達する可能性があることから、欧州での対応には強く注目する必要があると考えます。

ただENTSO-Eが示している方針では、太陽光発電設備そのものではなく、あくまで電力システム側の対応(国・地域間の緊密な連携)が最重視されていますが、他方で日本は(欧州のように)他国の電力系統との間での調整ができないので、日本にそのまま当てはめることは無理な気もします。

その意味で、日本での再エネ導入拡大においては、一種類の(特定の特性の)発電方式に偏らないことが、欧州よりも重要になると思われますが、現状ではFITの認定容量は見事に太陽光発電に偏ってしまっており、その状況が続く限りは、日食のような事態に対する潜在的な危険性を孕んでいると考えざるを得ません。

今回のENTSO-Eの発表には、太陽光発電について今までに無い視点を指摘されたと感じていますが、まずはあと9時間後に迫った日食を無事に乗り切ることができるか、欧州の動向を見守りたいと思います。


※参照資料:
[1]20 March Solar Eclipse: An Unprecedented Test for Europe’s Electricity System (ENTSO-E)
https://www.entsoe.eu/news-events/announcements/announcements-archive/Pages/News/20-March-Solar-Eclipse.aspx
[2]欧州電力界、日食で「前例ない試練」 太陽光発電ほぼ全停止へ(AFPBB)
http://www.afpbb.com/articles/-/3042805

2015年02月04日

九州電力管内での太陽光発電の接続済み+接続承諾済みが、昨年末に接続可能量の上限(817万kW)に到達

九州電力2015年2月2日に、自社管内の再エネ接続状況を公表していました[1]。

このうち太陽光発電の状況は下記の通り。(※一部数字は当ブログ管理人が計算)

  • 接続可能量817万kW(※2014年12月18日の経産省・小エネルギー委員会で決定)
  • 2014年12月末時点の申込量:計1919万kW
    内訳は、
    • 接続済み+接続承諾済み:計817万kW(※上記の接続可能量に到達)
    • 接続契約申込み+接続検討申し込み:計1102万kW

そもそも算定値の発表時点で、僅か20MWしか空き枠が無く[2]、しかも割当件数が3000件[3]であれば1件あたり約6.7kWなので、大部分が住宅用とみられ、回答保留されていた大量の産業用案件には、殆ど恩恵が無かったものと思われます。

接続上限に達したことで、九州電力が指定電気事業者になれば、一応は今後も、出力抑制期間の上限無しを条件に、系統連系することは可能です。

とはいえ、出力抑制期間が実際にどの程度生じるのかは全く不明であり、遠隔制御を実現するためのシステムや機器も未整備。

加えて次年度には、電力買取価格が更に引き下げられる可能性が高く、このままでは九電管内における太陽光発電の新規導入に、(住宅用・産業用ともに)分厚い暗雲がたちこめることは、避けられない気がします。


※参照資料:
[1]九州本土(当社分)の再生可能エネルギーの接続状況 他(九州電力)
http://www.kyuden.co.jp/effort_renewable-energy_application.html
[2](別紙1)再生可能エネルギー接続可能量の算定結果について[概要](同上、2014年12月16日発表)
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0044/3608/r8znv8990sy1.pdf
[3]九電の太陽光発電受け入れ満杯に(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20150203-OYS1T50011.html

※関連記事:

2015年01月15日

中国電力の太陽光発電の接続量(2015年1月9日現在)は446万kW、接続可能量(558万kW)までまだ余裕あり

中国電力が1月16日に、2015年1月9日現在再エネ発電申込状況を発表していました[1]。

概要は下記の通り。

  • 太陽光発電の接続済+接続申込済量446万kW
    ※接続可能量は558万kWであるため、接続契約の受付は継続する。
  • 再生可能エネルギーの接続済+接続申込済量506万kW
  • 中国5県の再エネ設備認定量(※2014年11月末時点):537万kW

太陽光発電の接続量(接続済み+接続申込済み)は、昨年10月時点(375万kW)から約16%の伸びであり、やはり接続限界が発表された地域とは対照的に、旺盛な導入が続いていることが伺えます。

ただし再エネ全体の新規認定量は、2014年5月〜11月の7ヶ月間で(4月時点の量の)3%しか増えておらず、太陽光発電の買取価格引き下げの影響が、長く尾を引いていることも感じられます。

太陽光発電の受入れ可能量には、まだ1GW以上の余裕がありますが、果たして(買取価格の更なる引き下げが見込まれる)4月の前に駆け込み申請が起こるのか、それとも4月を超えても上限に達しないのかは、太陽光発電の現在の採算性を推測する意味でも、注目したいと思います。


※参照資料:
[1]再生可能エネルギーの申込状況(中国電力)
http://www.energia.co.jp/elec/seido/kaitori/moshikomi.html

※関連記事:

2014年10月26日

中国電力が再エネ導入状況を公表、現状では回答保留は不要も、今後の申込急増を警戒

中国電力2014年10月22日に、再生可能エネルギーの導入状況を公表していました[1]。

主な内容は下記の通り。

現状

  • サービス区域内の再生エネの量(同年9月末時点、FIT開始前の接続済み分含む):計433万kW(接続済み188万kW、接続申込済み245万kW)
    うち、太陽光発電計375万kW(接続済み151万kW、接続申込済み224万kW)。
  • 中国5県におけるFITの認定量(同年7月末時点):526万kW
  • 最小需要(2013年軽負荷期の13時の需要実績):
    • 年間最小需要:540万kW
    • 軽負荷期の少ないほうから31日目:630万kW
      (※年間30日まで要求できる出力抑制を考慮した数字と思われる)

対応など

  • 回答保留は行わず
    サービス区域内の再エネ量、また5県のFIT認定量の両方とも、30日抑制を考慮した最小需要を下回っている。
    このため中国電力では、現状では回答を保留する状況には無い。
  • ただし注意は必要
    太陽光発電が急増していること自体は、他の電力会社と同様である。
    また、他の5社の回答保留により、中国電力のサービス区域への申込み急増も想定される。
  • 局所的な制約の顕在化
    太陽光発電の適地を中心に、送電線の容量不足なども顕在化しつつある。

年間最小需要はFITの認定量とかなり近いですが、少ないほうから31日目の需要量では1GWほどの余裕があり、(再エネ導入可能量の確保における)30日抑制の効果の大きさが感じられます。

考えてみると、他社の回答保留の発表では30日抑制には明言されていませんでしたが、現実に(発電事業者への出力抑制の要請によって)電力供給の安定性を十分に確保しうるのか、ということと合わせて、この点はより詳細な検討が必要になると考えます。

また、全体の需要量と供給量の数字上では余裕がある一方で、設備の能力上での受入れ制約については、局所的に既に出始めているとのことなので、現実的な受入れ可能量は楽観できないようにも思われます。


※参照・参考資料:
[1]再生可能エネルギーの導入状況(中国電力)
http://www.energia.co.jp/elec/seido/kaitori/pdf/dounyu.pdf

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